昨年7月からスタートした「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」。その対象である太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの各種エネルギーについて、事業化への関心が一段と高まっている。環境保全やエネルギー供給への貢献などと合わせ、ビジネスの観点からもメリットを見いだした企業がこの分野へ進出し始めているのだ。

そうした動きのなかで、注目を集めている国内のエリアがある。福岡県北九州市だ。実は同市では、かねてより再生可能エネルギー関連の先進的な取り組みが実施されており、関係者の間ではすでに名の知れた都市となっている。

まず風力発電についていえば、2003年、日本で初めて港湾地区での発電事業をスタート。すでに10年に及ぶ実績を有している。また今年に入っては、経産省所管のNEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)による国内で2番目の「沖合における洋上風力発電プロジェクト」も進行中。2015年3月まで実証運転を行い、年間発電量は一般家庭約1500世帯分に相当する550万kwhを想定している。

響灘風力発電所

そんな北九州市が、ここにきて、エネルギー事業への進出を考える民間企業から関心を寄せられている。なぜか。背景の一つにあるのが、地の利を生かした同市の積極的な企業誘致策である。「グリーンエネルギーポートひびき」と名付けられた事業では、風力発電産業に的を絞り、実証研究から製造、メンテナンスまでを一貫して実施できる「アジアの総合拠点」を目指し、事業者の集積を進めている。

ここで有利に働くのが、北九州市の充実した“港湾インフラ”と近隣の広大な“産業用地”だ。いま、風力発電の世界では、「大型化」「洋上化」がトレンド。そうした流れのなかでは、海上輸送がいっそう重要になる。そもそも風車を構成するナセルやブレード、タワーなどは巨大な重量物であるため、海路で運び、港に近い場所で組み立てるというのが理想的。「大型化」「洋上化」は、こうしたニーズをさらに強めているのだ。西日本最大級の水深を擁するコンテナターミナルやコンテナ以外の貨物に対応する岸壁などを備えた北九州市は、まさに風力発電産業に絶好の環境を提供している。

一方、マーケットの観点からも、このエリアが優位性を発揮する。欧州や北米を中心に成長してきた風力発電市場も、今後、中国やインドなどアジア諸国での拡大が予測される。アジアのゲートウェイともいわれる北九州市に拠点を設けることは、経営上のメリットも大きいだろう。実際、複数の国内外の関連メーカーが視察に訪れ、拠点の立地を検討しているというが、それもうなずける話だ。

風力発電機の部品数は、1万点とも2万点ともいわれ、産業としての裾野も広い。電力の安定供給に寄与する一方で、経済活性化の起爆剤としても期待されるところだ。日本の技術力を活かし、世界に打って出ることができるか。今後の動向が楽しみだ。