日本を覆い尽くす「引き籠もり」現象

世界中をまわっていて今、日本ぐらい元気がない国はない。特に異常だと思うのは、グローバリゼーションの進展に背を向けるような日本人の内向き、引き籠もり現象である。

端的に表れているのは就職戦線で、公務員人気が復活して専門予備校の受講生が急増しているという。また女子の場合は四大を卒業してもまともに就職できないということで、途中で看護学校などに乗り換える人が増えている。例年なら定員割れするような看護学校の倍率が今年は4倍、有名校では6倍にもなっているというから驚く。今や全入時代の大学よりも看護学校に入るほうが大変なのだ。

目指すのは公務員や看護師という超安定志向。今の若い世代から世界に雄飛しようという気構えや気概はまったく感じられない。留学生の数は減る一方だし、大手のグローバル企業に就職しても海外に赴任してもいいという社員は1割にも満たないだろう。

社内での上昇志向もない。「エコノミックアニマル」と言われた我々のような獰猛世代は、会社に入ったら社長を目指すのが当たり前だった。しかし、今の新入社員の目線の高さはせいぜい課長クラスまで。トップに手が届く取締役になっても、アンケート調査をすると社長になりたいと思っている人はほとんどいない。取締役で、もう十分。むしろ、これ以上責任の重い仕事はやりたくないと考えるのだ。

志や目線が低いから難しい仕事を嫌がる。先般、軽井沢で駐車場を経営している友人が、地元のハローワークに駐車場管理人の求人を出した。月給18万円。寒い中でも車が来るのを待つだけの退屈な仕事である。1日1台の車も来ないことだってある。にもかかわらず、1名の募集に若者を含めて400人の応募があったという。

友人は試しに何人かに面接してみた。ところが「将来、やりたいと思っていることは?」「特技は?」などと質問しても、「別に……」とテンションの低い答えが返ってくるばかり。全員がそんな調子だから気分が滅入って、彼は途中で面接係を投げ出したそうだ。要するに、入り口にセンサーでも付けておけば機械でもできるような超やさしい仕事には群がるのだ。