優秀な人間ほど、批判を受け入れられない傾向がある。失敗経験が少ないため、失敗した自分を受け入れることが苦手なのだ。自己防衛に走りがちな彼らの心を開くにはどうしたらよいのか。

防衛産業メーカーの新任CEOが自社の指揮管理の文化をつくり替えたいと思い、まず社員に10人の事業部長のパフォーマンスに関するアンケート調査に記入させ、それからそれぞれの部長と調査結果について話し合った。

話し合いはスムーズに進んでいたが、それは猛スピードで出世してきた38歳の若き事業部長の番がくるまでのことだった。「コミュニケーション・スキル」と「部下を敬意を持って扱う」という項目で低い点数がついていると告げたところ、事業部長は激しく抵抗した。彼は自分をスーパースターだと思っていた。彼は他の事業部が低迷していたときでさえ、一貫して目標を上回る数字をあげていたのである。

「成功を重ねてきたがゆえに、この幹部は自分が言われたことを信じられなかったのだ」と、この会社のコンサルタントを務めたバブソン大学経営学教授、ジョセフ・ワイントローブは語る。

後日、この幹部の行動が改善されるどころか、彼が部下を脅したり、侮辱したりしているという報告がCEOのところに上がってきた。CEOは、彼に問題を早急に理解させることが必要だと悟った。スターパフォーマーを失いたくはなかったが、そのスターの虐待的なマネジメント・スタイルと貧弱なコミュニケーション・スキルが他の社員のパフォーマンスを損なうことも避けたかった。それに加えてCEOは、自分自身がリーダーとして成功するためには、すべての部下が建設的批判を受け入れ、それに対応できることが必須要件であることを理解していた。

彼は、非を認めない事業部長とさらに数回にわたって話し合いを持ち、彼に対する自分の信頼を伝えることに時間を費やすとともに、本人にもっと発言する機会を与えた。しかし、その部長がようやく自分のやり方を変える姿勢を示したのは、そうしなければ解雇に至る可能性もあるという非情な厳しい事実をCEOが突きつけたときだった。時間とともに、この幹部は徐々に部下を敬意を持って扱うようになり、彼らの提案に耳を傾けるようになった。