世間で言われる降格には、役職が下がる場合と、給与と連動する社内資格(等級)が下がる場合の2つがある。役職が下がれば役職手当が削られ、等級が下がれば毎月の基本給が低くなるなど、いずれも減給は避けられない。

一般的に日本の等級制度は個人間の差はあれ、年齢を重ねるごとに賃金が積み上がる年功的運用がなされている。懲罰に値する不祥事を起こすなど、よほどのことがない限り等級が下がることはない。TOEICの点数が低いという理由で降格されるのはおかしいと思うのは当然のことだろう。

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降格は妥当か? 3つのチェックポイント

降格が妥当かどうかを検証する際、ポイントは3つある。まず就業規則や給与などの諸規定にそのことがちゃんと明記されているかどうか。次に、就業規則上の降格事由にそれらしい文言があったとしても、自分のケースがそれに当てはまるといえるのかどうか。そして3番目に、大幅な減額が会社の裁量権の濫用に当たらないかどうかである。

たとえばAさんが降格されたとする。それが妥当と判断されるのは、英語力がなければ降格や配置替えもあるという規定があり、事前にアナウンスされていることが前提だ。少なくとも今後の事業展開の方向性を社員に示し、それを実現するためには英語力が必要であることをきちんと説明する。

そのうえで人事評価の中に英語力の項目を設定し、評価が高いと給与も上がるが、評価が低い場合は給与も下がり、場合によっては降格もありうることを事前に周知しておくことが求められる。

こうしたプロセスを踏まない、あるいは評価の直前になって、規定ができたからという理由で降格するのは第一のポイントもクリアしていないといえる。

次に、Aさんの仕事がTOEICが高得点でないと支障を来すような仕事であるのかどうかを検証する。このとき、会社全体としての英語力の必要性、Aさんの部署での必要性、さらにAさん自身が担当する業務での必要性の程度が問題になる。

仮に業務遂行上、間違いなく英語力が必要であり、配置替えでは済まないとすれば、降格もありうるかもしれない。また、現在の業務では必要なかったとしても、英語力が必要な部署に異動の可能性が高い場合も同様に、英語力の必要性があるとみなされる。