責任を持った決断こそが「不確実性」への対処法

では、経済活動において、企業は「不確実性」とどのように向き合えばいいのか。

それは、先に述べたように経営者が責任を持って決断するということにつきる。しかし、残念なことに日本の経営者はこれが苦手だ。誰が決めたかわからないまま物事が進み、失敗しても誰も責任を取らず、うやむやにするのが日本企業の常である。

日航の場合も、経営者の無責任な対応がリストラを敢行しなければならないほどの危機的状態を招いたといえよう。

ただ、日本にも責任に関して、明確な姿勢を示している企業群がある。それはオーナー企業だ。オーナー会社の経営者は誰に遠慮することなく決断をする。ただし、決断の失敗の責任もすべてかぶる。この姿勢は「不確実性」に対する理想形といえよう。

代表的な例として、自動車会社のスズキが挙げられる。インドでは自動車=スズキというほど、そのシェアは圧倒的だ。その要因は、インド市場が現在ほど注目されないときに、市場への進出を決断したことにある。トヨタや日産ではあのタイミングでの進出は無理だっただろう。

一概には言えないものの、スズキと日航の差は、決して業種や景気などの外部要因によるものだけではないように思える。今回、政府は日航への支援を決めたが、同社には依然複数の労組があり、経営陣の混乱も続いている。7月には、トータルで9000億円もの巨大ファンド「産業革新機構」が発足。いまだに政府が「税金をただで注ぎ込む」ようなやり方がまかり通っている。結局、責任の所在があいまいなままなのだ。

03年に、日本のバブル崩壊への対応として誕生した産業再生機構は、支援の際、経営者に退陣を要求した。しかし今回は、日航もパイオニアも、エルピーダメモリも、経営陣を温存したまま結局責任を取っていない。間違えれば、「みんなが悪かったんでしょ」、かわいそうなときは「みんなで助け合いましょう」というやり方を続けている。このようなやり方が続けば、経営者が責任を持って不確実性に挑戦する緊張感は決して生まれないだろう。


※すべて雑誌掲載当時

(構成=原 英次郎)