技術系の社員が多い弊社では、担当業務分野の技術を深耕する傾向が感じられる。だから、業務に関連する知識やスキルに留まらない様々な分野に視野を広げる仕掛けが必要になる。特に、「キャリア形成」や「人間力」「使命感」等の書籍を課題図書として活用し、継続的な自己研鑽を促している。

たとえば新入社員には業務に慣れ始めた年末に課題図書『仕事の報酬とは何か』を読ませ、レポートを出してもらう。何のために働くのかという問いかけを通して、仕事に向き合う心構えの“気づき”を与えるためだ。著者は、仕事の意義を金銭的なリターンとして捉えず、むしろ新しい仕事を与えることで社員の成長を促すべきと説明する。田坂さんの本は、噛みくだいた文章で構成されていて、組織で働く我々にとって非常に腑に落ちる内容のものが多い。

またどうすれば周囲を巻き込んで、協力関係を築いていけるのかを教えてくれる一冊が、『人を動かす』だ。人の気持ちの機微を理解するうえで役に立ち、D・カーネギーの言葉はグローバル企業の社員にとっては、異文化に対してどのようにアプローチしたらいいか参考になる。

そして管理職には人間力形成を促す書籍として「先人の生き方、先人の知恵」に触れる書籍を推薦している。かつてA級戦犯として裁かれた広田弘毅首相の物語である『落日燃ゆ』を読んでほしい。企業人にも通じる、広田氏の結果責任に対する“潔さ”が伝わるに違いない。

1 仕事の報酬とは何か/田坂広志
 2 人を動かす/デール・カーネギー
 3 落日燃ゆ/城山三郎
 4 7つの習慣/スティーブン・R・コヴィー、ジェームス・スキナー
 5 坂の上の雲/司馬遼太郎
 6 美徳の経営/野中郁次郎、紺野 登
 7 菜根譚/守屋 洋訳
 8 右手に「論語」左手に「韓非子」/守屋 洋
 9 「原因」と「結果」の法則/ジェームズ・アレン
 10 経営の行動指針―土光語録/土光敏夫

(構成=鈴木 工 撮影=的野弘路、永井 浩)