私事ではあるが、大変忙しい。大学での授業もあるし、研究室の学生たちとの議論、論文執筆。講演で全国を飛び回り、テレビの収録、原稿の締め切りもある。

そんな中で、私がほとんどストレスを感じないのは、ふりかえってみると、脳科学のおかげだと思う。

私の人生を考えてみると、30歳くらいまでは、案外イライラしていた。神経質で、いろいろなことを気にして、そのせいか身体にも影響が出ていたように思う。

象徴的だったのが、身体検査で、よく心臓が引っかかっていたことである。幸い、精密検査をすると何もない。今考えれば、メンタルなストレスが影響を与えていたのではないか。

それが、偶然かもしれないけれども、脳科学を始めた30歳くらいから、あまりストレスを感じなくなった。自分の好きなことを始めたから、という効果もあるかもしれないが、そもそも人間の脳はどのようにして働いているのか、知識と研究経験を得たということも、大きかった。

ストレスを感じないで働くための秘訣は何か。何よりも大きいのは、自分でコントロールできることと、できないことの区別をすることである。そのうえで、前者については全力を尽くす。後者については、うまくいかなくても諦める。そのようにして拘らないことが、人生からストレスをなくす秘訣である。

たとえば、恋愛。自分が相手を好きで、いろいろ働きかけても、相手の気持ちがどう動くかは予想ができない。ビジネスでも、取引先の意向はコントロールできない。自分としてはベストを尽くしても、その結果は相手次第。やきもきしても始まらない。