男と女の間には「深くて暗い川がある」と歌ったのは野坂昭如だが、職場の同僚、上司、部下ともなれば、その川を越え協力し合わなくては業務にも支障が出る。平成23年のデータによると、雇用者総数に占める女性の割合は42.7%。まさにさまざまな立場、年齢の男女が混合で働くのが今の職場なのである。

「男性と女性では職場にいることの前提条件が違うことが多いのです」

エグゼクティブコーチとして企業のエグゼクティブ層のコーチングを担当するコーチ・エィの青木美知子氏は言う。

「1回会社に入ったら、基本的にサラリーマンとしての人生を全うすることがデフォルト(初期設定)なのが男性。対して女性は選択肢が多い中、自分で選んでその場所にいるのだという考えが強い」

図を拡大
リーダーシップにおける3つの領域

だからこそ、女性には「採用してやった」という上から目線でなく、お互いに選び合って今一緒に仕事をしているというリスペクトで、よいパートナーシップが築けるのではないかと青木氏は語る。

「特に女性は『大義』よりも、その場に貢献しようという意識が男性より高い傾向があるので、自分が本当に尊敬できる上司のためなら頑張ってくれます」

地位があれば黙って従ってくれる男性とは違い、女性は人間としての本質を見ているともいえる。やりにくいと思うこともあるだろうが、味方にすればこれほど頼もしい存在もないはずだ。

青木氏は、リーダーシップには大きく分けて3つの領域があると語る。

「1つは権威のパワー、2つ目が知識やスキル、経験といった実務能力。3つ目は人間性です。男性は1と2の力で引っ張りやすいですが、女性が重視するのは第3の領域。たとえば『部長が言ったから』という理由で強制すると女性にはそっぽを向かれがちです」