和菓子メーカー「つきじちとせ」では1年365日、従業員同士がお互いを「ほめる」朝礼を行っている。

同社の前身「ちとせ」は1998年に自己破産している。その後、全国に菓子メーカーの子会社を持つ寿スピリッツ(ジャスダック上場)が経営権を継承、再建を果たしたのである。

つきじちとせが「ほめる」朝礼を導入したのは2003年。寿スピリッツ社長の河越誠剛氏(つきじちとせ社長を兼務)が仕事の訓話を集めたオリジナル手帳を傘下の全従業員に配布し、朝礼で活用するよう求めてからのことだ。

つきじちとせの城内正行常務は「手帳の読み上げを始めてから社員の参加意識が高まりました」と言う。

「それまでにも朝礼は行っていましたが、幹部社員が訓示をする程度で、参加者は黙って聞いていただけ」(城内氏)

食品を扱う工場だけに、従業員は全員帽子、マスク、白衣を着用。お互いの服装チェックで締めくくる。

食品を扱う工場だけに、従業員は全員帽子、マスク、白衣を着用。お互いの服装チェックで締めくくる。

以前の朝礼はどこの会社でも行っているような業務連絡の延長にすぎなかったのである。それが「ほめる」朝礼を導入後、社員の意識が変わった。

従業員は順番で訓話の読み上げを行う。また、内容に関係する自らの体験を話さなくてはならない。同僚の前で話をするには準備がいる。必然的に前夜から手帳に載る訓話を読み、内容を頭に入れておくようになった。

一方、聞く側は訓話を読み上げる社員を「ほめ」なくてはならない。適切に相手をほめるには、日ごろから同僚の働きぶりや長所に注目することが必要だ。けなすのは簡単だけれど、ほめるには観察力がいるのである。

こうして、話すほうも聞くほうも事前に勉強するようになり、仕事に対する姿勢が真剣になったのである。

寿スピリッツでは傘下の菓子メーカーすべてに朝礼を導入した結果、どの企業でも売り上げがアップした。朝礼を毎日休まずに行うこと、内容を工夫することで、不況を乗り切ることも可能になるのだ。

(尾関裕士=撮影)