「戦略の構築と実行は別」とされてきたが……

最高にすばらしい戦略でも、現場社員、とりわけ日常的に顧客と接するような最前線の社員がしっかり実行しなければ何の役にも立たない。残念なことに、社員たちは普通、他人によって策定され、自らは十分理解しておらず、ましてや責任やつながりなど感じていない戦略を実行するよう求められるものだ。

実際、バランスト・スコアカード(経営戦略立案・実行評価のためのフレームワークの一種)の考案者、ロバート・キャプランとデビッド・ノートンによれば、自社の戦略について理解している社員は5%しかいない。このことが、戦略の効果的な実行をほぼ不可能にしているのである。

では、経営陣はどうすれば、現場の社員たちに会社の戦略を理解させ、支持させることができるのだろう。戦略の構築と実行は従来、別のプロセスとみなされてきた。

戦略は少数の経営幹部によって策定された後、実行のために現場に下ろされる。だが、ルビコン・コンサルティングのCEOで、『TheNew How:Creating Business Solutions Through Collaborati ve Strategy』の著者、ニロファー・マーチャントによれば、この分離は往々にして実行のまずさの原因になる。そのためマーチャントは、戦略構築を役員室の外に引っ張り出して、組織のあらゆる場所から社員を集めて会社の未来について議論させることを勧める。「会社全体を参加させよう。戦略構築プロセスの後ではなく、その間に参加させるのだ」と彼女は言う。だが、多くの企業がそのようなアプローチをとる態勢にはない。そのためマネジャーは、社員のあずかり知らぬところで策定された戦略のために社員の力を結集させる方法を見つけ出さねばならない。

そこで、最前線の社員が会社の未来を自分のこととして考え、責任を感じるようにするための3つの方法を紹介しよう。