予想されていたとはいえ、無残な数字が並んだ。

2008年11月12日、新生銀行は9月期中間決算を発表した。9月の段階ですでに280億円の黒字予想から一転し、150億円の連結最終赤字に転落すると発表したばかりだった。

しかし、蓋を開けてみると連結最終赤字は192億円と、当初の予想を大幅に超えるまでに膨らむ結果となった。しかも、社長であるティエリー・ポルテが退任し、かつて同行の初代会長を務めていた八城政基が社長を兼務、取締役会長として復帰することが発表されたのだ。

新生銀行誕生の立役者にして、功労者であるものの八城は一線を退いていた身。79歳という高齢で、非常事態に陥っている銀行を立て直す陣頭指揮にあたれるとは到底思えない。そうした八城しか引き受け手がいないほどポルテの後任人事は難航を極めた。誰もが“ババ”を引くことを拒んだのである。

1998年に経営破綻した新生銀行の前身、日本長期信用銀行(長銀)に日本政府はおよそ8兆円の公的資金を投入し、銀行を救済した。今も同行の株式約20%を所有する大株主は日本政府だ。それゆえ、新生銀行は通期利益予想が経営健全化計画を30%以上下回ると金融庁から行政処分を受ける。

2007年6月の業務改善命令は経営陣とともに、金融当局を慌てさせた。だが、今回の危機はそれ以上に深刻だ。なぜなら身売りが現実的なものとなり、もし買い手がつかなければ「長銀は二度死ぬ」という事態となり、金融当局への非難は避けられないものとなるからだ。

再生の見本ともいわれた新生銀行を窮地に追い込んだものはなんだったのだろうか。

長銀から生まれ変わった新生銀行の“売り”はリテールバンキングへの特化だった。ATMの年中無休24時間営業、窓口営業時間の延長などに象徴されるリテール業務の強化は、信販会社「アプラス」さらには消費者金融業「シンキ」への相次ぐ買収へと発展していく。今春、5800億円もの巨費を投じて買収した消費者金融業「レイク」もリテール・投資銀行業務強化の一貫とされる。

しかし、現実はどうだろうか。