どんなビジネスであれ、やるのは人間である。人間と人間がつくった社会がビジネスの舞台なのだから、それらを正しく理解することが働くうえでも生きるうえでも役に立つ。マネジメントのテクニックや財務諸表の見方といった技術はあくまで技術にすぎず、やる気さえあれば簡単に身につけることができる。すぐには役立たない知識こそが人生を豊かにするのだ。

企業や社会のリーダー層に限っていえば、日本は圧倒的に低学歴である。たとえば、国連の幹部登用はドクターかマスターでなければそもそも受験資格がない。海外のリーダー層ではそれが当たり前である。一方、日本では青田買いされた学生がさほど勉強しないまま社会に出てしまう。これでは国際的な競争に勝てるわけがなく、日本の株価が低い根本的な原因がそこにある。教養のない人がリーダーになっても、有効な手の打ちようがないではないか。

これからグローバルで勝負していくには欧米にとどまらず中国やイスラム、ペルシャ等の幅広い知識が必要であり、他方で自国の歴史を知っておかねばならない。人間を理解するにはすべての活動のもとになっている脳の構造を知る必要があるし、同時に感情の発露である愛や戦争についても知っておく必要がある。教養は好奇心の表れともいえ、人間と社会を知れば知るほど世界が広がり、より人生が楽しくなるだろう。