Q 俣野さんは自己投資の重要性を説かれています。私は自分を高めたいと思っていますので、ビジネス書を読んだりセミナーに出て、また異業種交流会や朝活なども頑張っています。これらは充実した時間ではあるのですが、最近、仕事も忙しくなり疲労もたまってきましました。そうなるとセミナーに出ているとき、自分が将来どうなりたいのか分からないまま自己投資に励むことに空しさを感じることもあります。セミナーに出ている時間が充実しているのであれば、そのような空しさは振り切って、このまま突き進んでもいいものでしょうか?(住宅メーカー、男性、27歳、入社4年目)


A かなり自己啓発に投資しているようですね。とてもいいことです。でも勉強を続けることに迷いが出てきたというのなら、次の2つの理由が考えられます。

1つめは、いま出ている勉強会やセミナーが、今のあなたにとっては卒業段階にある可能性があること。おそらく今のあなたは、無料もしくは低額のセミナーに、数打ちゃ当たるとばかりに何度も行っているのではないでしょうか。当然そこで会うのは自分と同じような人たちばかり。いま出ているセミナーの内容も、恐らくあなたが自分でも語れる段階の理解に至っているでしょうし、そろそろあなた自身も成果を出さないとつまらない。

だから刺激を感じられずに空しいのです。「充実している」ということですが、それは忙しさに酔っているだけかもしれません。

そもそも今の自分を改革するのが自己投資の目的ですから、今の自分が自然に選択してしまう、背伸びしていない範囲のセミナーに刺激が少ないのは至極当然のことです。

それではどうすればいいかというと、セミナーに出席する回数を10分の1に減らすことです。その代わり1回当たりの参加費が10倍のものに参加してみる。今まで1回3000円の会に10回参加していたのなら、3万円のものに1回だけ出席してみてください。すると面白いくらい内容が高度になります。同じ講師でも、講師の話す内容、コンテンツの深さが変わります。

そしてなんといってもすごいのは、参加者の質が変わること。いつもと違う人種が集まっていることに驚くでしょう。10倍の参加費を払える人が集まる会場には、おそらくあなたが今まで言葉を交わしたこともないような人たちが来ています。

みんな妙に迫力があるし、名刺交換したら社長だった、なんてこともしょっちゅう。そこへ明らかに場違いな若造がいれば、「今日は、上司に行ってこいと言われて来たの?」などと聞かれます。

「いや、自分で勉強しようと思って来ました」

「わあ、やるね。俺の20代のころは、そんなこと考えたこともなかったよ。すごいね、君」

と珍しがってもらえる。

「いや、そんなことないです。いろいろ教えてください」

と言えば、かわいがられます。こんなところからも新しい世界が開けてくるはずです。

出会う人が変わるという意味では、これまではまったく見向きもしなかったテーマのセミナーに出席してみるのも手です。マンネリの主な理由は、似たようなテーマばかり選んでしまう、あなた自身の趣向によるところも大きいからです。

このように勉強に行き詰まったときは、自己投資費用の使い方を見直してみるのも一つの手です。

もう一つの理由としては、いまはちょうど成長の停滞期なのかもしれないということが考えられます。

勉強の成果というものは、右肩上がりの矢印のようにはいきません。必ず階段状に進歩していきます。つまり階段を上がっていくときのように、途中の踊り場で足踏み状態になる。いくら勉強してもちっとも成果が出ない、プラトー(平坦域)といわれる時期を過ぎれば、一気にポーンと跳ね上がります。

英語を勉強したことがある人はわかると思いますが、辛抱づよくヒアリングを続けていると、全然聞き取れなかったネイティブの会話が、ある日突然はっきり聞き取れるようになる。

そんなふうに、今まで蓄積してきた努力がすべて報われる瞬間が必ず来ます。それを信じて勉強をやめないことです。それでもどうしても成果が出ないなら、さきほど述べたように、勉強のやり方を変えてみてください。

最後にもうひとつだけ。今のあなたは仕事が忙しくなってきたため勉強を続けるかどうか迷っているようですが、忙しいと思っているうちはまだまだ勉強が必要です。

あなたのまわりに、すごく仕事ができて大活躍している人はいませんか。そういう人を見ていると、「なんでそんなに大量の仕事を同時並行できるんだろう」「この人、いったいいつ寝てるんだろう」と思うでしょう。ところがそういう人に限って、本人はそんなに忙しいと思っていません。

忙しいのは時間の使い方が間違っていたり、要領が悪かったりするから忙しいのです。しかし自己投資をして効率的な仕事の仕方を学んだり、プレッシャーに負けない精神力を身につけたりすれば、大量の仕事も難なくこなせるようになる。

つまり忙しいから勉強する時間がないとか、お金がないから勉強しないというのは、まったく逆なのです。

社会人の勉強とは、「自分なんてまだまだ」「上には上がいる」といった場面を意図的につくり、ふんどしを締め直す行為でもあるのです。

自己投資というリスクをとらなければ、リターンという見返りもありません。これは絶対に間違いありません。どうぞこれからも勉強を続けてください。

※本連載は書籍『プロフェッショナルサラリーマン 実践Q&A』に掲載されています(一部除く)

(撮影=尾関裕士)