クラシックギタリスト 村治佳織

1978年、東京都生まれ。93年、津田ホールにてデビューリサイタル。同年、デビューCD「エスプレッシーヴォ」を発売。2003年、英国のクラシック・レーベル「デッカ」と日本人初の長期専属契約を結び、名実ともに日本を代表するクラシックギタリストとして活躍。また、ラジオのナビゲーターや雑誌連載など、クラシック分野以外でのメディアへの登場も多い。12年4月からはNHK-Eテレ「テレビでフランス語」、J-WAVE (FM)「The players」のマンスリー・ナビゲーター(毎月最終土曜日)も務めている。10月にはベストアルバム『リ・サイクル』(ユニバーサル・ミュージック)を発売。12月には紀尾井ホールにて「村治佳織 ギターリサイタル~Traveller・3都市巡り~」を開催(※公演は終了)。


 

食いしん坊なので美味しいお店巡りが趣味のひとつ。10代後半は仕事でお世話になった大人の方に連れていっていただくばかりでしたが、20代に入ると雑誌の情報を頼りに自分でお店を探すようになりました。今は知人からの口コミでお店を知ることが多いです。私も「美味しい店情報」を誰かにシェアするのが好きなんですよ。

シェリー酒の種類がおそらく世界一豊富な「しぇりークラブ銀座店」は特にお気に入りのお店。編集者の方に連れてきていただいたのがご縁の始まりです。私は現在、1年のうち数カ月をクラシックギターの本場、スペインで暮らしていますが、このお店は本場のタブラオ(フラメンコライブをする飲食店)の雰囲気が感じられるので、スペインに興味がおありになる方をお連れしたり、スペインが恋しくなったりしたときなどによく訪れています。マンサニージャ、オロロソなど、さまざまなシェリー酒を試せるのがこのお店の最大の特徴ですが、お料理も美味しくて、魚介などの素材を活かしたスペイン料理を堪能できます。一方で、エゾ鹿や穴子など、日本ならではの食材をアレンジしたメニューがあるのも楽しい。先日、劇作家で俳優の岩松了さんをお連れしたら気に入ってくださり、私もうれしかったです。

好きな食事処の条件は、美味しいのは当然ですが、「1人でも行ける」というのもポイント。お店の方が適度な距離感で接してくださると居心地がいいですね。場の空気感も大切で、飾らない雰囲気でリラックスできる店が好きです。「しぇりークラブ銀座店」もカウンター席がありますから、1人でふらりと立ち寄れる気軽さがあります。

和食の「銀座よしひろ」は元気をもらいたいときにもってこいのお店。ご主人の明るいお人柄にパワーをいただいています。靴を脱いであがるスタイルも寛げる理由。22時からなぜかカラオケができるので、私もたまに歌いますよ(笑)。歌うのは、ご一緒した方の年代や雰囲気に合わせて、美空ひばりさんや宇多田ヒカルさんなど。名物の「トマトおでん」をはじめ、煮魚など、どの料理も美味しいですし、銀座という場所と素材のよさのわりに、リーズナブルだと思います。

静かに自分や曲と向き合って演奏するクラシックギターは、言葉のない世界をたゆたう内面的な楽器です。その世界観が私は好きなのですが、一方で、1人の人間としての日々は、楽しく過ごしたいです。そのためには自分の殻に閉じこもらず、オープンマインドでいることが極意なのかな、と思っています。美味しい食事と楽しい時間を誰かとシェアして、プライベートを充実させたい。そうすれば素敵なお店をまたどなたかに教えていただけますしね(笑)。