インドに比べれば中国のほうがいい

(PANA=写真)

【宋】現地の日本企業のトップや駐在員と話す機会が多いが、彼らがインドへ転勤し、中国に戻ってくると、みんなインドは嫌だと言う。同じ途上国で、インドは民主主義の国なのに口をそろえて中国に来ることができて嬉しいと話す。その理由はまず、なんとも言えない安心感。中国人とインド人、あるいは中東の人たちと比較すると、中国人は日本人とそっくり。漢字もある。化粧品の肌に感じる具合、舌の共通の味覚、何よりも顔が似ている。これでたまに誤解を招くこともあるけど、実は親近感が抜群です。

残念ながら戦争があって、問題が生じている島が残っているけれど、これほど近い国同士の関係を大事にしないのは両方とも損だし、ここでもう1回戦争しても、また100年後には戦わなければならなくなると思う。この争いは、どう考えたって無駄だ。私は両国を見ているので肌で感じますが、中国にも日本にも一部に争うのが好きな人がいる。その人たちは、どうやって相手をけなすか、いかに自分が上等かを主張したがる。目つきや表情まで一緒。悪口の「中国」と「日本」をそのまま入れ替えても意味が通じるところまでぜんぶ一緒。

【富坂】本当にもったいないと思う。日中関係がどんどん冷え込んだら、漁夫の利を得る国はどこなのだろう。熊谷さん、こういう考え方はできませんか。例えば日中のFTAは、このままだと絶対進まないだろう。そうすると、韓国と中国はもうほとんどできています。で、そうなると、中国を日本がマーケットにしていく場合、これまで現地でつくっていた製品を、韓国発の輸出とすることになりかねない。あるいは東南アジアと中国は、すでにFTAがきちんと結ばれていますから、日本が直接できることを第三国経由でしなければならなくなるデメリットは、かなりあるのではないですか。

熊谷亮丸氏

【熊谷】係争が続けば、韓国に中国市場をとられるなどデメリットは大きいでしょう。

ではどうすべきか。日本はTPPを推進し、ASEANプラスシックスを発展させることなどを通じて、中国や韓国がTPPに入らざるをえない環境をつくる必要がある。大きな市場があれば、だんだん向こうも魅力を感じて無言のプレッシャーとなる。ドイツの場合、中国への自動車の輸出価格を見ると、日本製や韓国製の2倍ぐらいする。非常にブランド力が強い。これに対して、韓国の場合、マーケティング力が強い。韓国は国が小さいから、もう国内市場だけではだめだというので、中国に駐在員を送るときも片道切符で、10年、20年単位で送り込む。日本は4、5年で帰国してしまうので、中国の内情に通じた人間が育たないという問題がある。

【富坂】ドイツは、日本と中国の争いの中で得してきた。ドイツ車・サンタナは、上海汽車がつくっているが、車の製造拠点の誘致の話が最初に来たのはトヨタで、クラウンをつくってほしいと頼まれた。

ところがトヨタは1980年代だったこともあって、「とんでもない、そんなの無理に決まっている。20~30年早い」と断ったと言われている。中国はすごくメンツを失って、結局そこにうまく入り込んだのがフォルクスワーゲンだった。しかも評判のよくないサンタナを持ってきて、日本が蹴った話を、ドイツが救ったという立ち位置で、ちゃっかり進出を果たした。