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来年3月中国首相就任予定 李 克強(り・こくきょう/リー・クーチアン)
1955年生まれ。安徽省出身。北京大学法律学科、同経済学院経済学専攻修了。法学学士、経済学博士の学位取得。河南省党委書記、遼寧省党委書記を経て、2007年より中央政治局常務委員。


 

先の共産党大会を経て第18期中国共産党中央政治局常務委員会(最高指導部)の7つの椅子の2番目に座った。来年3月に首相に就任予定。11月21日の全国総合一体化改革試験事業座談会の席では「GDP7%さえ維持すれば2020年にややゆとりある社会が実現できる」「改革の深化が最大のボーナス」と訴え、自らの改革志向を国内外に強くアピールした。

安徽省の地方公務員家庭に生まれ、文革後に復活した最初の大学進学試験で北京大学法学部に進学。英語が堪能で抜群の記憶力を誇った。胡錦濤氏に見出され団派(共産党エリート育成機関・共産主義青年団出身政治家グループ)のエースとして頭角を現してゆく。一時は胡氏の腹心として総書記候補と目されたが、胡氏と江沢民氏の権力闘争の結果、習近平氏にその座を奪われた。副首相時代、国務院機構改革や食品安全問題の改善などの困難な仕事を任せられるも、結果が出せず、実力不足と陰口をたたかれた。一応、経済学博士号持つが、経済政策ではリーマンショック処理に辣腕を振るった金融通の王岐山氏の前に存在がかすんだ。エリートながら挫折の味も妥協も知る。

大学時代には民主化への期待を語っていた、と同窓生が証言している。1985年の中国青年訪日代表団の副団長を務め、小沢一郎氏の岩手の実家に泊まったという逸話が残る。その開明的思想や親日感情が今なお残っているなら、矛盾山積の中国経済にも冷え込む日中関係にも転機を与える可能性はある。だが他の6人の政治局常務委員たちはいずれも強力な保守派ばかり。挫折も妥協も知る孤立無援の共青団エリートが保守派勢力を向こうに回して、どこまで改革を進められるのか。心が弱いとも囁かれる李氏の胆力が中国の今後5年を占うカギとなる。

(写真=PANA)
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