東東京医薬支店 中枢神経・疼痛領域担当課長 
高木健一郎 

1971年、東京都生まれ。95年、中央大学文学部卒業後、アルバイト先であった工務店に就職、大工となる。2002年ファイザー入社。八王子支店配属後、06年より現在の病院担当に。

大学卒業後、大工として建設現場を取り仕切っていたという異色の経歴を持つ高木健一郎さんは、2002年にファイザーに入社。現在、都内のある大学病院担当MRとして活躍する彼の手にあるのは、さまざまな情報がパンパンに詰まった分厚いシステム手帳である。

「最初に配属された八王子支店では開業医を担当していました。診察時間さえ終われば座って話すことができますから、ポケットサイズの手帳で大丈夫でした。けれど大学病院担当になったとき、先輩から厚めのシステム手帳を勧められたのです」

大学病院ではとにかく長時間立って待ち、多忙な医師を追いかけながら、時間の隙間を縫うように仕事をするスキルが重要になる。だからこそ必要な情報がぎっしり詰まった手帳を片手に身軽に動くことが大切なのだ。

8年前から使っているという高木さんのシステム手帳を開くと年間、月間、そして週間欄がフルに活用されている。

「まず1年間の学会、説明会など重要なイベントを年間スケジュール欄に書き込みます。それを見ながら、準備にかかる期間を逆算し、月間のスケジュールを立てていくんです」

病院での長い待ち時間に手帳を何度も見直し戦略を立てる。医師への訪問頻度が開きすぎていないかなども確認。基本、3カ月以上開けないようにする。

「すごい先生方だって人の子です。とにかく訪問頻度を多くし、小さな約束でもきちんと守っていくことから人としての信頼関係が始まると思うのです」

週間欄の左ページにはその日会った医師の名前が並ぶが、右ページは1週間分のタスクリストとして、上から順に書き込んでいく。終わったものには赤いチェックを入れるが、チェックがないものには○をつけて目立たせる。


先輩MRに勧められたシステム手帳を8年間愛用。なんでも挟み込めて、1冊でほとんどの仕事をこなせるところが魅力という。年間通して使う情報にはパウチを施したり、頻繁に変わるデータは次々に貼り込んで格納していく。

手帳のメモ欄は、医師との打ち合わせなどの際の議事録の役目を果たしている。丁寧にメモを取れないようなときに大活躍しているのが、薬の販促アイテムとして配布されるポケットサイズのメモ帳である。常に胸ポケットに忍ばせておき、医師との話で印象に残ったことを殴り書きし、重要な事項は後で見直して手帳に清書する。が、メモするのは仕事に直接関係することだけではない。たとえば、ある医師が何気なくつぶやいた「北海道のあるブランドのお菓子が大好き」といった話もすかさず書く。帰社してからすぐインターネットで調べ、「東京でも買えるみたいですよ」といった情報メールを送り、距離感を縮めていくこともしばしばだ。

高木さんは、とにかく人が大好きだという。かつて建設の現場をまとめていたときに、予定どおりに建物を完成させるには、関係者たちを上手に巻き込んでいくことが大切と痛感した。その力は今の仕事にも生かされている。08年には成績優秀なMRへの特別報奨制度であるアルピニスト賞を見事受賞した。

どちらかというと論理より感性で動いていくタイプだという高木さん。長期の目標は常に見据えているが、短期的に緻密な計画を立てていくのは少々苦手だという。分厚い手帳は、日々の行動に洩れがないかしっかりサポートする秘書のような役目を果たしている。