東洋水産の袋麺「マルちゃん正麺」が売れている。同製品の特徴は、生麺のようなコシのある食感にある。昨年11月の発売開始当初、同社は年間100億円を販売目標としていたが、200億円に上方修正。生産ラインを増設し、対応する。

加工食品で同規模を売り上げた新商品となると、2002年に発売された日清食品のカップ麺「日清具多」まで遡る。飲料を除く加工食品全体を見ても、「マルちゃん正麺」のヒットは、10年に1度あるかどうかの水準だと言えよう。

なぜ、これほどの大ヒット商品が生まれたのか。背景には東洋水産の堅実でマイペースな経営がある。

コストダウンを繰り返しながら縮小均衡する国内市場で利益水準を維持し、海外展開を拡大していく──。袋麺、カップ麺などの即席麺市場だけでなく、食品業界各社に共通する課題だ。東洋水産はこうした課題にいち早く気づき、国内の即席麺市場で日清食品に次ぐ2番手を維持しつつ、海外市場で拡大を続けてきた。現在、アメリカの即席麺市場における同社のシェアは約6割、メキシコでは約8割と圧倒的だ。しかし、さらなる海外展開には慎重であり、日清食品が進出を進めるアジア地域とは今のところ距離を置いている。

また、1990年以降、不動産投資で失敗する食品メーカーもある中、同社は投機的な活動を控えてきた。確実に稼げるところを見極め、そこで稼ぐ。その結果として生まれた潤沢なキャッシュが、新たな商品開発の原資となり、今回のヒットに繋がったと考えられる。

今期、東洋水産は増収増益を見込む。だが、広告宣伝費がかさんでいるため、「マルちゃん正麺」の利益貢献はさほど大きくない。来期以降の戦略が勝負の鍵を握る。

最大の壁は競争の激化だ。袋麺市場トップのサンヨー食品は、9月に「サッポロ一番 麺の力」を、カップ麺トップで、袋麺では2位につける日清食品は、8月末より「日清ラ王」の発売を開始。いずれも“生麺感覚”を売りにした商品だ。

この袋麺ブームは来期まで続くと予想する。だが、再来年まで続くかは怪しい。消費者に浸透した新ブランドをカップ麺に横展開するなど、東洋水産の次の一手に期待したい。

(構成=プレジデント編集部)
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