Q 俣野さんは著書『プロフェッショナルサラリーマン』のなかで、「女性社員の評価は厳しくも正しい」とおっしゃっています。私は女性社員をマネジメントするのが得意ではなく、おそらく彼女たちの評判もよくないと思います。女性の部下をうまくマネジメントするコツはなんでしょうか?(繊維商社、男性、46歳、入社12年目)


A 僕は会社員時代、女性社員たちが社内のいろいろな人について、「あの人はいい」「あの人はダメ」と品定めをする場面に居合わせたことがあります。その評価は社内の地位や役職の高さと必ずしも一致していませんでしたが、実に的を射たものでした。

女性は人を判断するとき、いろいろなところを細かく見ていると思いますが、とりわけ重視しているポイントがあるようです。

それは「上にへつらい、下を見下す人なのかどうか」ということ。たとえば部下に怒鳴り散らしているところへ上司がやってきたら、態度が豹変して、もみ手をせんばかりになるような人は、確実に女性から軽蔑されると思います。

しかし男性からすれば、「それはそこまで責められるようなことだろうか?」と思うでしょう。もちろん相手によって態度が変わるのはあまりいいことではないけれど、会社というところは上下関係があって指揮系統が明確になっているからこそ業務が円滑に進むのだから、上の人が下の人に偉そうにするのは、ある程度しょうがないことだという感覚がある。

ただ、女性はこの男性社会の決まりごとが理解できないし、許せない。よく若い女性が「デートしていて、彼がお店の人に横柄な態度をとるのを見て幻滅した」などと言いますが、それはそういう理由からでしょう。

それでは女性社員からの評判をよくするにはどうすればいいかといえば、嫌われる人の逆をすればいい。「どんな人に対しても同じ態度をとる」と決めて実行すれば、確実に好印象を持ってもらえます。

僕は女性社員のマネジメントで悩んだ経験がないのですが、それはおそらく、どんな相手でもスタンスを変えないからだと思います。常にどうすれば相手のためになるかを考えて行動するというスタンスは、相手が部下だろうが上司だろうが同じ。

もちろん言葉遣いは多少変わるけれど、「この人とつきあえば得だからサービスしよう」とか、「こっちがお金を払う立場だから、この人には不快な思いをさせてもかまわない」というように立場で態度を変えたりしない。

実はそのほうが自分も楽なのです。どんなときでも一定の自分でいると決めれば、態度をコロコロ変える必要がありませんから。

ですから僕は、男性の部下にも女性の部下にもまったく同じ態度で接しています。もし女性だからといって変に差をつければ、それこそ女性は敏感ですから、すぐに気づかれてしまう。優秀な女性ほど、女だからといって特別扱いされるのを嫌います。平等に扱うのが大事です。

ただし僕の経験からいうと、効果的なモチベーションの与え方には男女差があるように思います。何か新しいことに挑戦するとき、男性はチャレンジの結果得られるリターンに、女性はチャレンジすることで負うリスクのほうに目が向く、という特性がある。したがって男性にはできるだけ遠くの大きな目標を見せ、女性には目の前の不安を取り除いてあげるといい。

男性には「俺と一緒に歴史をつくろうぜ」といった壮大なビジョンを示し、女性には「何が心配なの?」と問いかけて不安を全部吐き出させ、それを一つ一つ解決していくというスタイルが有効です。

もっとも男性向けの励ましで大いにやる気を出す女性もいれば、その逆の男性もいる。そういった意味では、男性脳、女性脳という言い方もできます。

基本的にマネジメントに女性用も男性用もありません。部下の強みに仕事を乗せていけばいいだけです。逆説的ですが、男女差を意識しないのが、女性のマネジメントには必要なのかもしれません。

※本連載は書籍『プロフェッショナルサラリーマン 実践Q&A』に掲載されています(一部除く)

(撮影=尾関裕士)