上司の罵声だけが響き、一様に押し黙る社員たち……。業績が伸び悩むと、会議が鬱々とした雰囲気に包まれることも少なくない。参加者の士気向上のため、リーダーは何をすべきか。社員にいい影響を及ぼす会議を考える。

「最近、会議の雰囲気が暗くてね。業績の落ち込みのせいか、誰も積極的に発言せずに下を向きっぱなし。まるでお通夜の会場です」

こう明かすのは中堅メーカーA社の営業部長、井上慶一さん(仮名)だ。A社は業界内で健闘しているものの、近年は業界自体が傾いて売り上げは頭打ちに。井上さんは毎週開かれる営業会議で現場の士気を高めて浮上のきっかけを掴みたいと考えているが、会議は沈滞ムードが漂ったままだという。

この現象はおそらくA社だけの問題ではない。日本経済に明るい展望が描きづらい現在、業績とともに会議まで停滞している企業は少なくないはずだ。ただ、会議がうまく機能しない原因を業績だけに求めていいものだろうか。経営コンサルタントの寺沢俊哉氏は、「業績のせいにするのは責任転嫁」と手厳しい。

日本生産性本部主席 
経営コンサルタント 
寺沢俊哉 

1961年、東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業。84年よりパルコにて新事業開発等を担当。89年より約200社の経営コンサルティング、数千人の研修を実施。近著に『感動の会議!』。

「業績が落ち込めば、たしかに雰囲気は悪化するかもしれません。しかし、業績のいいときに会議が機能していたのかは疑問。単にいまより厳しさを必要としなかっただけで、会議自体は低調だったところが多かったはずです。本来、業績と会議の因果関係は逆。業績が会議のデキを決めるのではなく、会議が機能していないから業績が伸び悩むのです」

では、停滞する会議はどこに問題を抱えているのか。A社の例をもう少し掘り下げよう。井上さんは、会議が盛り上がらない理由を次のように分析している。

「実は業績不振を受け、去年から担当役員が現場の会議に出席するようになりました。部下が発言をセーブするのも、役員の前で迂闊なことを言えないというプレッシャーがあるからでしょう。例えば停滞中の案件について報告すると叱責が始まり、時には現場の事情を無視した指示が出る。反論があってもそれを言い出せる雰囲気ではないため、部下も『うまく進んでいる案件まで掻きまわされたくない』と、本来は報告すべき案件まで隠してしまう。私も現場出身なので、気持ちはわからないでもないのですが……」

もちろん役員の参加は悪いことばかりではない。部門の壁を超えてリソースを活用しやすくなったり、その場でスピーディな決裁をしてもらえるといったメリットも大きい。こうした利点を享受しつつ、運営者である中間管理職が自分の上司をコントロールするにはどうすればいいのか。寺沢氏は「まず会議のゴールを共有すべき」とアドバイスする。