定年後は「晴耕雨読」「悠々自適」……。そんな夢を打ち砕くのが「リストラ」だ。現在、リストラは実際どのように行われているのか。そしてリストラに遭ったら、老後をどう過ごせばいいのだろうか。

「なぜ自分が辞めなければいけなかったのか、と悶々と考え込むことがある」

石橋充さん(仮名・57歳)は、失業中のいまの心境を切り出した。専業主婦である妻とともにランチを食べにいくと、背広を着た会社員の姿が視界に入る。そのようなとき、釈然としない思いがふつふつと湧いてくるという。

2009年10月に、ヨーロッパに本社を構える外資系企業の日本法人を辞めた。その代表といえるカントリーマネジャーを務めていた。それ以前にも、いくつかの外資系企業でマネジャーや支社長を歴任した。その手腕を買われ、07年9月にこの会社に入った。年収は、日本の大企業(一部上場)の課長級の倍近い。

就任早々から、大手メーカーをはじめとした取引先と良好な関係を次々とつくっていった。その後、08年秋に起きたリーマン・ショックによる不況の影響もあり、業績は伸び悩んだが、部下を4人から8人までに増やし、体制を整えつつあった。その矢先に、思わぬ事態に出くわした。

09年の9月、上司である、アジア地区のディレクターが香港から来日した。その場で言われた言葉が「あなたには辞めてもらいたい」。事前に説明はなく、突然のことだった。理由を尋ねると、イギリス人のその上司は「会社は次のステップに進む。だから、トップも代える」と答えた。