10月1日、新日本製鉄と住友金属工業が合併し、新日鉄住金が誕生する。粗鋼生産量で最大手のアルセロール・ミタルに次ぎ、中国の河北鋼鉄、宝鋼集団とほぼ並ぶ世界2位グループの鉄鋼会社となった。

だが、船出は難航しそうだ。新日鉄住金は、2012年4~9月期で合計2400億円の特別損失を計上することを発表。円高や市況の悪化が主な要因である。

合併の最大の目的は、経営の合理化にある。合併による規模の拡大で、原料調達コストの削減や生産拠点の統合・再編による生産性の向上が期待できよう。また、資金力が高まり、新たな設備投資を行いやすくなる利点も生まれる。両社は合併3年で年1500億円規模の統合効果を目指すが、その大半は変動費の削減が寄与するとみられる。

かつて、世界トップを誇った日本の鉄鋼メーカー。だが、近年は中国、韓国を筆頭とする海外勢に苦戦を強いられてきた。新日鉄住金の誕生で、ふたたび世界の主役となれるのか。

最大の壁となるのが、韓国ポスコの存在だ。同社は、新日鉄の前身である八幡製鉄、富士製鉄などから技術協力を受けて成長を続け、2011年の粗鋼生産量では新日鉄の6位を上回る世界4位に浮上。新日鉄とは現在も提携関係にあるものの、自動車向け鋼板をはじめ、多くの分野で競合関係にある。売上高でみると新日鉄住金が上回る見込みだが、収益力では大きく水を空けられている。2011年度の売上高経常利益率はポスコの6.9%に対し、新日鉄が3.5%、住友金属が4.1%という水準だ。

新日鉄住金はポスコに対し、技術力、顧客への提案力で勝る。にもかかわらず、収益力で劣る理由は2つ。1つは円高およびウォン安の為替動向。もう一つは法人税率の差だ。これらは両社の競争力に大きく影響する。こうした環境が続く限り、新日鉄住金はポスコを凌駕できないだろう。

今回の合併は、将来的に海外市場で成長を遂げるための攻めの戦略と同時に、財務基盤を固めるという守りの側面を併せ持つ。インドなど、今後の成長が期待される市場では、現地企業などとの合弁によりリスクを分散して展開し、同時に、合理化による財務指標改善を進められれば、必ずチャンスは訪れるはずだ。

(構成=プレジデント編集部)
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