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フォルクスワーゲングループジャパン社長 庄司 茂(しょうじ・しげる)
1963年生まれ。神奈川県出身。85年、早稲田大学卒業後、伊藤忠商事に入社。自動車関連事業に携わり、94年からマツダモーターハンガリー、2009年からスズキモーターロシアと、伊藤忠商事が出資する現地法人の社長を務める。8月より現職。


 

「競合がひしめき合う日本のスモールカーマーケットに真っ向勝負を挑む」――。この8月、輸入車最大手の独フォルクスワーゲン(VW)日本法人のトップに就任。昨年秋の欧州に次いで日本市場でも10月1日から売り出した戦略小型車「up!(アップ!)」の発表会では、新米の社長とは思えぬ堂々としたパフォーマンスで、こう宣戦布告した。

日本の自動車市場は低燃費・低価格の志向が強まり、新車販売の7割を小型・軽自動車が占める。その売れ筋の市場に切り込む新型車のアップ(排気量1000cc)は、これまでVWで最小だった「ポロ」よりも全長が短く、狭い道が多い日本でも運転しやすいスモールサイズ。ハイブリッド車並みの低燃費にしたほか、ユーロ安を追い風に最安モデルで150万円を切るなど、輸入車でも買いやすい価格に抑えたのが特徴。安全面でも、追突防止装置を小型車クラスでは初めて標準装備した。

「輸入車は敷居が高いと思っていたユーザーにも、我々のショールームに足を運んでいただける」(庄司社長)と、国産車からの乗り換えに期待を寄せる。

庄司氏は伊藤忠商事出身の元商社マンだが、入社後は自動車事業に長く携わり、マツダモーターハンガリーや、スズキモーターロシアなど海外では統括販社の社長経験も豊富。だが、「実は、日本での自動車販売は初めて」と謙虚に打ち明ける。それでも自信をのぞかせたのは「我々にとって日本市場が右肩下がりだとは思わないし、バリア(障壁)を下げることでまだチャンスはある」と判断しているからだ。

昨年のVWの国内販売台数は約5万台。独本社からの「2018年までに2倍以上の11万台に引き上げる」との目標を達成することが、就任早々の日本法人社長に課せられた任務だ。

(写真=PANA)
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