「どうして自分がリストラされるのか」……気づかない間に会社から必要とされなくなってしまう人は多い。その原因の一つは、会社が必要とする人材は常に変化しているということだ。

仕事ができるより“人気”が大事

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出所:日本経済新聞社

「今後は仕事ができても“人気”のない人は出世できない。そればかりか、リストラの対象にもなりうる」

私は人事コンサルタントとしてさまざまな業種の人とお会いしているが、最近よく耳にするのが、中堅社員に対するこのような評価である。

私自身は現場の人たちと接しているので「なるほど」と納得できるが、多くの人にとってはショッキングな言葉ではないだろうか。

なにしろ、たとえ仕事ができても、部下や同僚に嫌われ「一緒に仕事をしたくない」と思われるような人は、上にいけないというのである。大げさにいえば、日本企業における出世の法則が変わってきたのだ。

背景にあるのは、成果主義人事の行き詰まりである。

バブル崩壊後、日本企業の多くは、個人の成果を報酬や昇進に結びつける成果主義的な人事制度を競うように取り入れてきた。そこでは、結果を出せる社員がすなわち「いい社員」であり、周囲と円滑な関係を築けるかどうかは2次的な要素とされた。

ところが、ここへきて深刻な副作用が出始めた。「なにがなんでも成果を出す。そのためには、あらゆる犠牲を払う」といった極端な成果至上主義に陥り、部下や同僚、あるいは協力会社の人と「うまくやる」ことができない中堅社員が増えたのだ。

いうまでもなく、会社は組織で動いている。コミュニケーションがなおざりにされれば、組織全体としてのパフォーマンス(成果)はじわじわ低下する。日本企業の多くは、改めてそのことに気づき始めたのだ。

もっとも、成果主義そのものが悪いのではない。高いパフォーマンスを目指し、チーム全体であれこれと工夫をこらすのは当然である。