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ヤマダ電機会長 山田 昇(やまだ・のぼる)
1943年生まれ。73年群馬県前橋市で電器店を個人創業。74年有限会社ヤマダ電機社長。83年株式会社ヤマダ電機を設立。2008年会長兼代表執行役員CEO。


 

7月に発表されたヤマダ電機によるベスト電器買収に家電量販業界は驚いた。ヤマダはベスト株約7%を買い集め第2位の株主となっていたが、2007年に一度、提携を呼び掛けて拒絶された経緯があった。当時、ベストはビックカメラに助けを求め資本業務提携も結んでいる。これまでの恩讐について、記者会見でベストの小野浩司社長は「当時は社長ではなかったから断ったという認識はない」と説明した。一方、山田昇会長は「相手は別にベストでなくてもよかったのか」との記者の問いに「はい」と答えるなどドライな姿勢が際だって見える一幕があった。

「規模の利益を追求しシェアに徹底的にこだわる」というのが山田会長の持論。山田氏は買収に関して「来る者は拒まず」とよく言うが、その意味合いは「屈服するか、それとも死ぬか」に近い、とある銀行関係者は話す。「全面降伏に近い形で傘下入りするなら受け入れるが、そうでなければ豊富な資金で近隣に大規模店を出店しライバルを蹴散らしてきた」(同)。ベストや、6月にビックの子会社となったコジマが追い詰められたのは、ヤマダの出店攻勢によるところが大きかった。

それだけに今回、話題になっているのが「ベストにやさしすぎるヤマダの買収条件」(関係者)。ベストの看板を残し、ヤマダからは経営陣を派遣せず、現体制がそのまま残る。「コジマをビックに取られた焦りもあり、どんな条件でもベストを買いたかったのでは」(電機メーカー)との見方がある一方、「買収金額はわずか121億円。都心部に自前の店舗を出すのと大差のない資金で、競合に圧倒的な差を付けられるメリットは大きい」(アナリスト)と評価する声もある。いずれにせよ、山田会長が買収に動いたことで業界再編はさらに加速することになりそうだ。

(PANA=写真)
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