アップルの次世代スマートフォン(以下、スマホ)、通称「iPhone5」が今秋にも発売される見込みだ。この登場により、スマホの普及がさらに加速することは間違いない。

電子部品各社は、スマホやタブレットの登場により少なからず恩恵を受けている。特に好調なのが日東電工だ。

同社は、ディスプレーに使われる偏光板で高いシェアを持つ。従来の主力事業は液晶テレビ向けの偏光板。だが、今期より携帯電話・タブレット向け製品の売り上げが液晶テレビ・モニタ・ノートPC向けを上回りそうだ。タブレット向け偏光板には薄さ、軽さ、精彩さなど高い技術が求められ、供給できる企業も限られる。そのため、面積当たりの単価はノートPC用と比べ3~4倍に上り、スマホ向けはさらに高いという。これらの製品の売り上げ拡大により、利益率の上昇も期待できよう。

躍進する理由は2つ。新製品の提案力とコスト力だ。同社は市場の動向を見据え、伸びの期待できる製品を他社に先駆けて開発してきた。製造工程でも大幅なコストカットを実現している。iPhone5関連の受注にも成功したとみられ、2013年3月期の売上高は前期比9%増、純利益は59%増を予想する。

電力を蓄えるために必要なコンデンサーでは、村田製作所が強みを持つ。スマホなどに使われる超小型の積層セラミックコンデンサーのシェアは35%。世界トップを誇り、現行のiPhoneや韓国サムスン製のギャラクシーシリーズにも採用されている。12年4~6月期の業績は低迷したが、iPhone5向けの売り上げが本格化するとみられる7~9月期では回復を見込む。

TDKはリチウムポリマー電池をアップルへ供給する。05年に香港企業のATLを買収し、この分野でシェアを拡大。利益率も上昇傾向にある。

スマホ、タブレット向け部品で競争優位に立つ日本勢だが、課題もある。顧客先が限られるため、顧客動向により業績が左右されやすい時期が出てしまう点もその一つ。たとえば12年4~6月期のiPhoneの販売台数はアナリスト予想を下回ったため、村田製作所を筆頭に関連企業の業績および株価に短期的に悪影響が出た。市場の動向を読み、新製品を継続的に投入できるかが今後の成長のカギとなろう。

(構成=プレジデント編集部)
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