旧ソ連の宇宙飛行士、ユーリ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行に成功したのは1961年4月12日だから、はや半世紀以上の歳月が流れたことになる。その間の宇宙開発の発展はすさまじく、69年の7月20日にはアメリカ合衆国のアポロ11号宇宙船に乗って月に到着したニール・アームストロングとバズ・オルドリンの2人の飛行士が人類初の月への第一歩を記したのは50歳代以上の方ならよく覚えているであろう。

今では国際宇宙ステーションが完成し、常時6人のスタッフが宇宙に滞在しているまでになった。日本の若田光一、野口聡一、古川聡の3人の飛行士もそれぞれ4カ月から5カ月もの長期間、ステーションに滞在している。

ところが2012年になって少々困ったことが起きている。ステーションに人を運ぶアメリカのスペースシャトルが老朽化のために11年で使用できなくなったのだ。今、使用できるのはロシアのソユーズだけだ。中国はこれとは別に独自で宇宙ステーションを造り、飛行士を送り込むことを計画しており、今年中には実現するかもしれない。

アメリカとしても指をくわえているわけにもいかないが、デフレの影響で予算が削減され、新たな宇宙船を造るのは難しい。そこでオバマ政権は民間に任せようという方針に転換して、12年の5月22日に民間初の宇宙船ドラゴンが打ち上げられ、5月31日無事帰還した。

ドラゴンを打ち上げた米国の「スペースX社」をはじめとした宇宙ベンチャー企業は、宇宙開発はビッグビジネスのチャンスだと捉えているようだ。「宇宙ビジネスを進める『ビゲロー・エアロスペース』などの米企業が、世界初の長期滞在型の民間宇宙施設として2016年に打ち上げる『宇宙実験室』の利用者を日本から募集することが1日明らかになった」(12年6月1日付 読売新聞東京版 夕刊)

そのうち民間人も気軽に宇宙へ行ける時代になるのかもしれないが、気になるのは費用と健康への影響だろう。

今までは、ロシアのソユーズだけが、数十億円のお金を払えば民間人を宇宙旅行に連れて行ってくれたが(実際に7人の大金持ちが宇宙に行っている)、米国の企業は約2千万円の費用で宇宙旅行者の募集を始めたようだ。

もうひとつ大きな問題は人体への影響だ。祖父母から両親、子供まで総勢6~7人で宇宙旅行ができる夢のような時代になったとしよう。一番大きいのは無重力の影響だ。無重力になると目だけの情報に頼るため、大脳の位置判断がおかしくなり、宇宙酔いを起こす。また血液が上半身に移動するため、脚は鳥のように細くなり、顔は満月のように丸くなる。これはどの年齢層にも起こる。次に骨密度が下がり骨粗鬆(こつそしょう)症のような状態になるだろう。お年寄りは地球に戻ってきたとたんに寝たきりになってしまうかもしれない。

さらに宇宙線の影響がある。宇宙線は強い放射線なので、長期の宇宙旅行は危険だ。宇宙ステーションに1日留まると地上の半年分の放射線を浴びるとのことだ。これは特に子供には重大な影響がある。将来ガンのリスクが高まるからだ。家族で宇宙旅行に行く夢はそう簡単には実現できないかもしれないね。

(構成=山田清機)
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