いまの子は味覚が鈍くなっている?

味覚表現の“基本のき”5味

「小学生に、甘さを感じる閾値(しきいち)ギリギリの0.3%のショ糖水を飲んでもらい、『どんな味がしますか?』と質問したところ、甘味を感じることができた子は3分の1ほどでした。一方、清涼飲料水と同程度の10%ショ糖水では、ほぼ全員が甘い、と答えました。なかに『甘すぎ』と感じた子がいて、お母さんに聞いてみたら『普段から薄味にするよう気を付けている』とのことです。子供の味覚は家庭の食生活の反映といえます」

子供の味覚について語るのは、東京ガス「食」情報センター主幹の杉山智美さん。同社では、各種の食育イベントで「味覚教室」を実施しているほか、主宰する子供料理教室「キッズインザキッチン」でも、「味覚体験コース」を設けている。甘味の違いを体験するのもその一環だ。

「味覚は学童期に発達します。甘味の濃いものばかり食べていれば、甘さを感じる力は鈍くなります」

 では、どうすれば味覚が鋭い子に育つのか。あげてくれたポイントは2つ。

 「まず、食経験の幅を広げてやること。甘いものばかりでなく酸っぱいものや塩辛いもの、また歯ごたえのあるもの、香りのあるものなど、バラエティーに富んだ食卓が子供の味覚を育てます。そしてもう一つは、食べているものの味を意識させること。食卓での会話がチャンスです。味を表現して人に伝えることで、繊細な風味にも気がつきます。親が黙って食べていたり、何を食べても『おいしい』で済ませたりでは、お子さんも食に関心は向きませんよね」

 なるほど。確かに、近頃の若者からは「ビミョー」とか「ヤバい」とか、おいしいのか、おいしくないのかもよくわからない言い回しも聞こえてくる。なかには「しょっぱい」と「すっぱい」の違いがわからなかったり、おいしいものはみな「甘い」で嫌いなものはみな「苦い」と言ったりする子もいるという。