変革が相次ぐ現在のビジネスでは考え続けることが求められる。ビジネスに有効な考え方とは何か、問題解決のプロフェッショナルにその真髄を聞いた。

若手社員がなかなか期待通りの働きをしてくれないと悩む管理職は多いだろう。若手社員の戦力化を図るとき、まず考えてほしいのは時間軸である。短期で結果を出さなければいけないなら部下をじっくり育てる余裕はなく、なかば自分も手伝いながら仕事を進める必要がある。一方、会社が長い目で見てくれるなら、基礎から叩きこんでもいい。どちらにしても時間軸によって指導法は変わる。指導の成果が出ないと嘆く前に、いつまでに、どのようなレベルまで育成したいのかを意識すべきだ。

時間軸は設定し直してもいい。短期で考えれば難しいと思える営業力育成という課題も、ロングスパンで考えると解決の糸口が見つかるものだ。具体的に言えば、5年後に彼がどんな営業マンに育っているかをイメージして、そのためにいまから身につけておくべきことを一つ一つ指導していけばよい。人材育成に限った話ではないが、物事に行き詰まったときは、時間軸をずらすことで視点を変えてみる。

熱心に指導しても成果があらわれない場合は、自分が教えるスキルと、若手社員のレベルや目的との間にギャップがある可能性もある。例えば野心家で出世願望の強い部下に、報告書の書き方を一から教えても仕方がない。マニュアルに書いてあるようなことは、すでに習得しているからだ。逆に平平凡凡とサラリーマン生活を送ろうと考えている部下に、新しいアイデアの発想法を教えてもあまり意味がない。前項で自社のシーズと市場のニーズが合致しないと商品開発はうまくいかないと指摘したが、育成も同じ。自分が指導できるスキルと相手のニーズがつながったとき、人は成長するのである。