不確実性の時代。個人の生涯も、日本という国も、世界全体も、先が見通せない時代になっている。

こんな時代には、不安が強まる。昨今の「脳ブーム」もその一つの表れであろう。脳を理解することの難しさ、脳の複雑さに日々直面している身としては、「何々は脳にいい!」という断言を求められる脳ブームはどちらかと言えば苦手である。

それでも、人々が自分の脳を不確実な時代における大切な「資源」として見直そうとしていることには、意味があると感じている。不確実性に向き合うためには、自分たちの「脳」をもう一度振り返る必要があるからである。

不確実性に対して、「不安」を感じるのはある程度仕方がないとして、それがゆきすぎると問題になる。ビジネスの現場でも、人生でも、健全なかたちでリスクをとることは不可欠だが、「不安」が先に立つと前向きになれなくなる。

とりわけ、日本では「安全」や「確実」を過剰に求める傾向が強い。何かが絶対に起こらない、ということを示すのはいわゆる「悪魔の証明」であり、事実上不可能である。その不可能なことを自分に対しても他者に対しても求めては、物事は始まらない。

そもそも、この世は完全な予測などできないということは、科学的に「証明」されている。生命現象、社会現象、気象現象をはじめ、さまざまな分野で「1+1=2」にならない、「非線形性」がある。現在の傾向を敷衍して、未来はこうなるだろう、と予測したくなるのは人間の常だが、たいていの場合そうはならないのである。

生命や気象、社会などの「複雑系」においては、わずかな初期状態の差が大きな違いにつながる。また、そもそもシステムが外に開かれているから、一部分だけを見ても予測などできない。つまり、「カオス」と呼ばれる状況が避けられないのだ。

数年前は地球温暖化が喧伝されていた。今でもその懸念が消えたわけではないが、今度は太陽活動の変化に伴う地球の寒冷化の警告がなされている。もともと、どこかで大きな火山噴火が起これば、太陽光が遮断されて地球は寒冷化する。私たちは、「地球温暖化」という傾向が未来を支配すると考えがちだが、現実はそんなに単純ではないのだ。