あなたの周りに優秀で仕事をテキパキとスピーディに片づける人はいないだろうか。仕事が速いことと腹を立てやすいことの間にははたして相関関係があるのだろうか。実は、仕事が速いことの裏側には私たちが陥りやすい深刻な問題が潜んでいるのである。

仕事を早く片づけようとして陥る落とし穴

ビジネスPNS:どのくらいあなたにあてはまるのかを感じるままに、答えてください。

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企業で「切れ者」とか「仕事師」と評判の高い人が、「瞬間湯沸かし器」とか「おこりびと」などの別名でひそかに呼ばれていて、そのような上司の前で、顔がひきつり、体を硬直させた部下が直立不動で立っている場面を目撃したビジネスパーソンは多いのではないだろうか。「切れ者」タイプの人は仕事が速く、どんどん仕事を片づけていくので、経営者の覚えもめでたく(ときには経営者も同じタイプであったりする)、パワハラに近い言動があっても、周囲も遠慮して何も言えない。そのような仕事の速い人には、なぜすぐに腹を立てる人が多いのだろうか。

アリゾナ州立大学でとても興味深い心理実験が行われた。きちんとした生活習慣を好む傾向や、あいまいで、結果がどうなるのかわからない状態を嫌う傾向を、人がどれくらいもっているかを測定するPNSという心理テストがある。PNSのスコアが高い人ほど、その傾向が大きい。心理学を勉強しようとする学生にこのテストを受けてもらったうえで、学期末までにある課題をやり遂げたら単位を取得でき、やり遂げなかった学生は次の学期に再挑戦しなければならないという条件が与えられた。その結果、PNSスコアが高い学生は、低い学生に比べ、やり遂げた学生の割合が高く、早い時期に課題をやり遂げる傾向がみられた。つまり、規則正しい生活を好み、何が起きるかわからないような環境を嫌う学生のほうが、まじめに、スピーディに与えられた課題に取り組んだ、ということになる。私たちが日常で使う「まじめな人」という言葉は、「規則正しい生活習慣をもち、安定した状態を好む人」と言い換え可能ではないだろうか。だとすると、まじめなビジネスパーソンのほうが、そうでないビジネスパーソンよりも、与えられた仕事をやり遂げる確率が高いという結論は当然すぎるくらいである。