“ものづくり日本”の衰退が叫ばれる中、超効率経営を行う2つの企業がある。ファナックとキーエンスだ。直近の売上高営業利益率は、前者が41.2%、後者が45.7%。キーエンスは3年に1度株式分割を行うが、その分を考慮した両社の株価は、おおむね上場来高値圏にある。

なぜ、好収益体質の構築と株価上昇を実現できるのか。理由は3つある。

1つ目は、自ら市場創造できること。

ファナックは、工作機械用の数値制御装置で世界シェア約50%、産業用多関節ロボットでも世界2位。機械の電動化と知能化による市場創造を進めている。一方、キーエンスは、産業用センサ、測定器などを扱い、売上高の約30%が新製品。そのうち約70%が世界初あるいは業界初の商品である。また同社は、米アップルと同様、製品開発に特化するファブレス企業である。ニッチ市場を攻め、世にない商品をつくる点で、両社の戦略は共通している。

2つ目は、圧倒的な価格競争力だ。

競合がひしめく家電メーカーの場合、製品の差別化が難しく、価格決定権は流通側にある。しかし、ファナックとキーエンスには、ピタリと当てはまる競合企業がいない。自ら市場を創造し、他社との差別化を図ることで、自分たちで製品価格を決定することができる。

3つ目は優秀な人材が揃っていること。人材獲得のためのコストを両社とも惜しまない。特にキーエンスの場合、平均年収は1300万円を超える。

両社に死角はないのか。現段階では、ほとんどないと私は考えている。

ファナックの場合、あえて挙げれば地理的リスクくらいだろう。本社と主力工場の所在地は、富士山の麓にある山梨県忍野村。精密機械を作るための好条件は整っているものの、仮に噴火などが起きた場合、経営に大きな打撃を与えるリスクがあろう。

キーエンスの場合は、人材流出だ。工場を持たない同社を支えるのは、優秀な「人財」である。引き抜きや独立など、中核の人材が大量に辞めることになれば、ダメージは大きい。

しかし、いずれの確率も今のところ低い。不確実な世界経済と大企業病が蔓延する中、超効率経営を続ける両社は、日本の「ものづくり」を考えるうえで大いに参考となろう。

(構成=プレジデント編集部)
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