ギリシャで危機が再燃している。6月17日の再選挙の結果次第ではユーロ圏離脱という可能性も想定されるが、そうなればギリシャの国家財政の再建は一層困難となると筆者は説く。

ユーロ圏からの「離脱ルール」は規定されていない

ギリシャ・パパデモス前首相は「ユーロからの離脱を排除しきれない」と発言、市場の緊張感が高まった。(写真=PANA)

欧州財政危機のトリガーとなったギリシャ財政危機に対して、2010年5月に第一次救済策が提示されて2年余りが経過した。この間に第二次救済策が追加されたものの、一向にギリシャにおいて財政再建が進まない。それどころか、ギリシャ国内において財政再建自体が放棄されかねない状況に至っている。ギリシャの財政危機に対する救済は、財政再建と債務削減とセーフティネット(EFSFとESM)整備の三本柱によって遂行されるはずであったが、その三本柱のうち、もっとも重要な財政再建がギリシャ国内の総選挙において放棄されようとしている。

先の5月6日に行われたギリシャの総選挙において、財政危機から抜け出すために財政再建を進めようとしていた、新民主主義党と全ギリシャ社会主義運動の与党連合が惨敗したために、ギリシャの財政再建の行方に黄色信号が灯ってしまった。あるいは、一時停止を意味する赤信号が点滅しているかもしれない。5月6日の総選挙の結果は、結局はどの政党も組閣できずに、6月17日に再選挙を行うこととなった。この再選挙の結果いかんによっては、点滅している赤信号がそのまま赤信号として灯ったままになるか、黄色信号、さらには、希望的観測かもしれないが、青信号に変わるかが決まる。もし点滅している赤信号がそのまま赤信号として灯ったままになると、財政再建を条件として受けることになっていたギリシャへの支援策が打ち切られる可能性がある。さらには、ギリシャがユーロ圏からも離脱するという最悪シナリオも想定され始めている。

リスボン条約には、EUから離脱する際の規定が定められているものの、ユーロ圏から離脱したり、離脱させるための規定が定められていない。EUがユーロ圏離脱の規定を定めていないことから、ギリシャはユーロ圏にとどまることができるものの、財政再建に向けたギリシャの取り組みとユーロそれ自体に対しては波乱要因となっている。すなわち、ユーロ圏離脱の規定がなかったことが、ユーロ圏から離脱させられないだろうという期待に基づいて、財政再建や財政緊縮を受け容れなくてもすむのではないかというモラルハザードがギリシャ国内で起こっているようにも見える。