弓野哲史●ユニ・チャーム情報システム部副部長
1965年、東京都生まれ。専修大学経営学部卒業後、88年ユニ・チャームに入社。2009年より業務改革本部情報システム部副部長。


 

「限りある資源をどう成長のために有効活用していくかは、経営そのものでありシステム戦略も同じ。アジア各国に拠点を構えるなどグローバル展開を進める当社にとっては、その点でクラウドコンピューティングとの相性がよかったといえます」

こう話すのは、ユニ・チャーム業務改革本部本部長兼情報システム部部長の元井誠一さん。

ユニ・チャームでは2007年から「Google Apps」の機能の一つであるGmailをグループ内で採用し、現在は国内拠点で完全導入するまでに至っている。Google Appsとは、独自ドメインでグーグル製品が使えるようになるビジネス向けのサービスである。

導入のきっかけは、自社で構築・運用していたメールシステムの劣化、海外進出時のITコスト削減、さらにはグループ各社のドメインの統一だ。同社の情報システム部副部長で、Google Apps導入の指揮を執った弓野哲史さんは、経緯について次のように話す。

「従来のシステムはスパムが多くて保存容量も限られるなど、多くの不都合が生じていました。しかしながら、新たにシステムをつくるとなると国内だけで億単位の初期費用がかかり、さらに海外拠点を構えるたびにシステムを設置していれば、同規模の負担がかかるばかりか、スピーディに事業が展開できません。こういった問題を解消するためにどうすればいいか社内で協議したところ、外部のサービスを活用しようという結論に至ったのです」

そもそもユニ・チャームではシステムについて「大きなモノを持たない・つくらない・持ち込まない」という三原則が以前からあったという。巨大なシステムは設置・運用にコストがかかり、当然ながらそれは製品価格に跳ね返らざるをえない。それは、良質な製品を適正価格で消費者に届けたいという同社の理念に反してしまう。さらに、海外拠点で一からシステムを構築するとなると、プロバイダ探しから設置、テストなどに手間を要し時間を浪費するだけ。