Q 忙しく、達成感を得られない
北尾吉孝●SBIホールディングス 代表取締役、執行役員CEO。1951年、兵庫県生まれ。慶應義塾大学卒業後、野村証券入社。95年、ソフトバンクに入社し常務に就任。著書は『何のために働くのか』ほか多数。

北尾氏回答 日頃から、「忙しい」が口癖になっている人は胸に手をあてて考えてほしい。何から何まで仕事を抱え込んではいないか、ひょっとしたら部下や後輩も含めた周りの人を信頼して任せることができていないのではないか、と。

私は30代の頃、上司から「北尾君、これやってくれ」と言われても、「この仕事は僕より彼のほうが適任ですよ」とよく押し返していた。やり方を間違うと、「上司の言うことを聞けんのか!」と怒りを買ってしまうが、本当に適任で、時間に余裕がある人を名指しつつ、自分の仕事をきっちりこなしていれば上司も文句は言えない。

たとえ上司からの命令でもすべて受ける必要はない。「できる社員ほど、上司の無理難題をやり過ごしている」という経営学の研究もある。30代になればそのくらいの駆け引きができなければ大きな仕事はできない。後輩や部下の面倒で忙しいというなら、自分が仕事を任せられる人を育てていると考えれば、多忙であることも苦にならないのではないか。

人の使い方には、使用・任用・信用の3種類がある。使用とは、ただ立場が下の人を使い用いること、任用とは、役目を与えて任せて働かせること、信用とは、その人を信頼し全部任せてしまうこと。このうち部下が最もやる気を起こしてくれるのは3つ目の信用だ。立場が上になり、部下の数が増えれば増えるほど、信用をできるかどうかが問われる。