顧客の課題が明らかになると、「その課題はうちの商品でも解決できます」と言って、すぐ提案につなげようとする営業担当者は少なくない。

横田雅俊カーナープロダクト代表取締役。外資系ISO審査機関にて営業職を経験。「最年少」「最短」「最高」記録を更新し、世界2300人のトップセールスに。営業に特化したコンサルティングファーム、カーナープロダクト設立。著書に『営業は感情移入』。

しかし、すでに利用中の商品がある場合、顧客は「どの企業の商品も同じだから、わざわざ比較検討するまでもない」と考えている。この誤解を解かぬまま自社商品の優位性を説明しても、話を聞き流されてしまう。

どの商品でも同じだと考えている顧客に説明してほしいのが、コンセプトの違いだ。たとえば同じような2LDKのマンションを売る場合でも、企画にあたってのコンセプトはそれぞれ違うはずだ。家族とのコミュニケーションをテーマにした部屋もあれば、自然との共生をテーマにした部屋もある。

こうしたコンセプトを伝えると、結果的に似たような間取りになっていても、顧客はそれぞれの違いを意識するようになる。コンセプトをストーリー仕立てで説明すると、より強く顧客の印象に残るだろう。

一方、価値の違いをデータで示すことも重要だ。マンションなら暖房効率や防音性能について数字を示すことで、構造や材質によって大きな差があることが伝わる。できれば金額ベースまで落とし込み、「暖房効率が10%違うと、光熱費が年間○万円違う」と説明する。

コンセプトや価値の違いを説明するときは、顧客がいま利用している競合商品にケチをつけないように注意したい。競合商品を否定すれば、それを選んで使ってきた顧客も否定することになる。自分の過去の選択を頭から否定されて喜ぶ人はいない。