人気の毎月分配型に罠が潜んでいる

毎月分配金を受け取れるタイプの投資信託の人気が続いている。2010年に設定された投信で資産残高の多い上位10本のうち、9本を「毎月分配型」が占めるほどだ。

たとえば、「1万口当たり毎月100円の分配金を出す」という投信を100万円購入したとしよう(1万口当たり1万円の場合)。そうすると、毎月1万円、1年間で12万円の分配金がもらえる計算になる。この低金利時代にこれはお得だと思うかもしれない。だが、本当にそうだろうか。

安定的に「分配金を出す」投信であれば、利益をあげている商品だと考える人が多いが、実はそうともいえないのだ。毎月分配型投信のなかには実際の利益以上に分配金を出して、資産を食いつぶしてしまうもの(タコ足分配)もある。たとえば、1万口当たり1万円で購入した投信の価格が7000円に値下がりしているにもかかわらず、年間1200円の分配金を払い出している商品もある。株や債券の価格が下落したり、円高になったりして投信の価格が大幅に値下がりしている(利益は出ていない)にもかかわらず、たくさんの分配金を払えるのはなぜか。

実は、分配原資となるのは「(1)株式や債券の利子配当収入」や「(2)株式や債券などを売買することによって得られる損益(為替差損益含む)」だけではない。追加型株式投資信託の場合、前期から繰り越された「(3)収益調整金」や「(4)分配準備積立金((1)(2)のうちその期に分配金として支払わなかった残りの金額)」も分配可能額に含まれる。そのため、仮にその期に利益が出ていなくても、分配金を出すことができるというわけだ。

ただし、ここで注意したいのは、投信とは別に、分配原資という“別ポケット”があって、現金がプールされているわけではないということだ。運用する投信のなかに分配原資があるわけだから、運用次第で分配原資は変動する。また、(2)で株式や債券の売買損や評価損が発生しても、分配可能額からそうした損失は差し引かれないという事情もある。要は、会計上「分配可能額」という数値は存在するが、単純に(1)から(4)までの合計額をすべて分配金として支払えるわけではないのだ。