世界銀行は2011年5月に発表した報告書で、2025年に人民元は米ドル、ユーロと並んで世界の基軸通貨になると予測した。中国政府は人民元取引の規制緩和を進めているが、資本勘定取引の交換性を高める必要があると筆者は説く。

中国の入国審査官はなぜ最近、愛想が良くなったのか

先日、とある懇談会で国家の国際化戦略について話が及んだときに、その国際化に対するスタンスは外国人に対する入国審査に表れるという話が出た。海外に対して積極的にオープンにして、国際化を図ろうというスタンスを持つ国は、その入り口の入国審査においてもその積極性がうかがわれるし、逆はまた逆である。たとえば、アメリカは、移民政策にも反映されているように、入国審査は厳しい。パスポートのチェックだけではなく、詳細な入国審査の書類への記入が必要である。さらに、入国審査において指紋や眼の虹彩による生体認証まで行われる。

一方、その反対の極にあるのは、筆者の経験の中では、フランスではないかと思う。EU域内をパスポートなしで移動することができるシェンゲン協定の対象外の域外国からの入国に対しても緩やかである。たとえば日本人はパリ・シャルルドゴール空港で、入国審査の書類に記入する必要がないし、そのような書類自体が到着前の機内で配布されない。

最近は、フランスの移民政策が厳しくなりつつあるせいか、パスポートに入国のスタンプが押されるが、以前はパスポートに入国のスタンプさえ押されないときもあった。パリからフランクフルトを回って、フランクフルトから帰国する際に、フランクフルト空港の出国審査官にいつどこからEUに入ったのかと尋ねられて、どぎまぎした覚えがある。シャルルドゴール空港だと答えて、ドイツ人の出国審査官が納得したことに驚いた。

さて、中国においては、北京オリンピックの前後から入国審査に対するスタンスが若干変わった。以前は威圧的で厳しい入国審査を受けていた印象があった。しかし、北京首都国際空港にしても上海浦東国際空港にしても空港ビル自体が新築されて、オープンスペースが増して、開放感に溢れている。また、筆者が知る限り、他の国の空港にはないものが入国審査のカウンターに備え付けられている。入国審査の対応が良かったか、悪かったかを評価して、「ニコニコ顔」から「困った顔」のボタンの中から一つ押すことができるようになっている。そのせいか、最近、入国審査官の愛想が良くなっている。こちらも思わず、「ニコニコ顔」のボタンを押しながら、「謝謝!」と応えてしまう。このように、中国も国際化に向かって、若干積極的なスタンスをとるようになってきているようである。