菅野幸一郎(バレーボール V・プレミアリーグ女子・東レ監督)

かんの・こういちろう 1967年、福島県生まれ。法政二高、法政大学卒。90年、東レ男子バレーボール部入部。2003年東レ女子バレーボール部コーチを経て、05年から同部監督に就任。

まじめで謙虚、でも情熱家。Vリーグきっての人格者でとおる。44歳の菅野幸一郎監督は、ロンドン五輪でメダル獲得を目指す全日本の木村沙織や荒木絵里香らを擁する東レを2季ぶりの王座に導いた。この5年で4度の優勝である。「人並み以上の努力をする」をモットーとしている。

自身、法大—東レのバレーボール部で活躍し、ビーチバレーの選手としても鳴らした。東レの男子監督から、女子のコーチに移り、2005年、監督に昇格した。以来、選手とのコミュニケーションを大事にする。「選手も人間。一人ひとり、いろんな考え方がある」という。

昨季、東日本大震災の影響でリーグが中断、その時点での順位(東レは2位)をもってシーズンが終わった。4連覇は成らなかった。ショックだった。「勝てなかったことは選手も私も非常に悔しい。ただ悔しいだけでは勝てない。一緒に人並み以上の努力をするんです」

菅野監督は「力で勝とう」と選手に言った。力とは、チーム力、組織力である。それぞれに課題を与え、組織としてディフェンスを強化し、連係プレーを磨いていった。その中で、エースの木村には高速のトスを打つことに挑戦させた。レシーブされやすいとみるや、決勝ラウンドでは元の速さに戻した。試行錯誤の中、ずば抜けた素材の木村は考えるようにもなり、相手のブロックをよく見て打つようになった。つまりは巧くなった。

たしかに東レには全日本の選手が主軸を務めている。だが全日本の選手だけでは勝てない。全日本以外の選手や若手が着実に力をつけ、チーム力を押し上げた。全日本抜きのメンバーで国体にも優勝した。

胴上げのシーン。「カンノ、カンノ」の手拍子で輪の中に引きずり出され、選手たちの手で宙に舞った。なかなか下ろしてくれず、神輿のように担いで歩いてもらった。「うれしいです」。そう漏らし、笑顔で続ける。

「いろんなことを思い出しました。選手には結構、うるさく、ぼろくそ言いながらやってきましたから」

(坂本 清=撮影)