普天間移転問題に関して、日米両政府が「グアム移転」と「辺野古移設」を切り離したことで「普天間の固定化」がいわれている。しかし、実は辺野古案は昔からアメリカ側にあった計画であり、普天間撤去は米兵の犯罪や立地の危険性等々が理由。グアムは米軍の軍事再編計画の一環……と、本来別々だったこれらの案件が、当局のメディア操作で同一のパッケージであるかのごとく印象付けられてきた。プレジデントオンラインでは、2年も前にその一連の事情を描いた短期連載「普天間の闇」(プレジデント誌2010年3月29日付号、5月3日付号、7月19日付号)を今、当サイトに再掲載するのは意義のあることと判断、3回にわたってお送りする。

※この記事は第2回です。

外務省の“翻訳権”、マスメディアの“情報独占権”

「政府の考え方、それは私自身の腹案であります。その中身を一言も申し上げておりません」

普天間飛行場の移設問題を巡る2010年3月31日の党首討論で、鳩山由紀夫首相は「腹案がある」と答弁した。「現行案とされる名護市辺野古沿岸部以外で候補に挙げられたキャンプ・シュワブ陸上部や勝連半島、徳之島などは、首相のいう“腹案”とどう違うのか?」を質した記者たちに、翌日、鳩山首相が応じたのがこのコメントだ。

この発言を報じた4月2日付の朝日新聞は、「苦しい説明」と締めくくっている。この問題を巡って、ほとんどのメディアが「鳩山政権は移設先探しでドン詰まりになるに違いない」との論調で埋め尽くされている。

「政府案」と報じられて次々に登場する候補地が、ことごとく地元や米側の反対で暗礁に乗り上げ、その“残骸”だけが地図上に残されているからである。

沖縄では、移設先に関して常にメディア情報が先行してきた。モグラ叩きのように登場する移設候補地に付いていけない地元自治体は、「我々も地元紙を見て驚いているくらいです。市には、正式には話がきていません。だから対応できないんです」(うるま市企画部秘書広報課・松本隆宏氏)などと戸惑うばかり。うるま市には、移設先候補の一つ「勝連半島」がある。

問題の当事者が情報を後追いし続ける事態に、沖縄県の仲井眞弘多知事も事あるごとに不満を洩らしてきた。辺野古を擁する名護市の稲嶺進市長も言う。

「重要な情報は我々を素通りしていきます。政府から何も聞かされていない立場ですから、情報源はマスコミしかありません。新聞に『市長は県外を諦めていない』という書き方をされ、心外ではありますが、マスコミを敵にはできないもので……」

米軍再編で沖縄海兵隊をグアムに移転する計画が着々と進められていることはすでに公表されている。これまでマスメディアは、海兵隊のグアム移転をほとんど黙殺してきたが、4月に入ると注目すべき変化を見せる。

最初に「海兵隊 北朝鮮核が狙い」という見出しの記事を一面トップで報じたのは1日付の毎日新聞だ。普天間問題で「海兵隊」の文字が一面の大見出しに登場したのは、たぶんこれが初めてだろう。同記事は、「米海兵隊が沖縄に必要なのは、抑止力以上に、北朝鮮崩壊時の核の除去を最重要任務としているからだという話が、米側から新たに日本側へと伝えられてきた」と報じた。「中国脅威論」が「米中・日中の経済関係の現実を踏まえていない」という一喝で退場しつつあるなか、今度は「実は核処理こそが任務だったらしい」という“ニュース”をスクープ扱いでデカデカと報じたわけだ。記事では、この話を伝えてきたのが「米軍高官」、それを明らかにしたのは「関係者」だとされている。