毎年、2~3月は各金融機関に寄せられる住宅ローン相談の件数が増える。3月引き渡しの物件が多く、ローン契約を迫られる時期だからだ。これから住宅ローンを組む人には、前回述べた理想の住宅ローンの3要素を押さえてほしい。つまり(1)少なくとも10年以上金利が固定されていること、(2)貯蓄する余裕を残した返済額であること、(3)60歳までに完済できることである。

現在、新規借り入れの8~9割を変動型が占めている。変動型の金利は1%前後(金利割引後)で、仮に毎月11万円を返済できる場合、4000万円近く借りられる(図参照)。対して、3%では3000万円しか借りられない。「頭金不足でも金利の低い変動なら、欲しい物件に手が届きますよ」というセールストークで不動産会社から変動型を勧められ、安易にローンを組んでしまう罠にはまりがち。大手行は変動型の増加に危機感を募らせているが、借りる人自身こそ、金利上昇や借りすぎのリスクを認識したい。相談者の中には、「不動産会社がしばらく低金利が続くといっていたから大丈夫」「金利が上がりそうになったら固定に切り替える」という人もいる。しかし数年先の金利など誰にもわからないし、固定への切り替えも容易ではない。

変動金利は日銀の政策金利、固定金利は10年国債利回り(長期金利)の影響を受けるが、長期金利は政策金利に先行して上下することが多く、変動金利ローンの金利が上がったときには、すでに固定の金利は上がっていることが多い。すでに上がっている固定金利にしか切り替えができず、大きく返済額が増えてしまう(そのために切り替えができない)、ということになる可能性が高い。

その意味でも10年固定か、長期固定金利型の利用が賢明だ。10年固定では11年目に金利が見直され、返済額が増える可能性があるので、教育費や妻の働き方なども踏まえ、将来の家計を予測してみよう。返済額アップへの対応が難しそうなら、長期固定型が安心だ。保証料無料のソニー銀行「20年超固定」や、住宅金融支援機構のフラット35が候補となる。補正予算が通り、一定の基準を満たす物件ではフラット35の金利が当初10年1%引きになる制度も始まる。

借入額については、安心して返済できる額から逆算して決めるのが鉄則だ。「家賃並みの返済なら大丈夫」と考える人が多いが、固定資産税のほかにマンションでは管理費などローン以外に年間60万円程度の出費を強いられる。

ローンが払い切れないなど、万が一、売却しなければならない事態に陥った場合、売却価格がローンの残高を下回ればローンが返しきれない。その意味でも、物件価格の8割以上を借り入れるのは危険であり、頭金不足での購入にはリスクが伴うことも念頭においておきたい。

安心して返済していけるプランを立て、そのうえでおトクなローンを選ぶ。それが住宅ローンを組む際の重要なポイントになる。

※すべて雑誌掲載当時