具体的な見直し方法はリスクの内容によって異なる。処方箋をお話しする前に、理想のローンについて整理しておこう。

私が考える理想的な住宅ローンには3つの要素がある。1つ目は「少なくとも10年間、金利が固定されていること」。その間に残高を確実に減らすことができる。たとえば10年固定では11年目に金利が見直されるが、10年間で残高が減っている分、11年目に金利が上昇しても返済額の増加をある程度抑えられる。

2つ目は「ローンを返済しながら貯蓄できる返済額であること」。身内の不幸や冠婚葬祭、家電の買い替えなどが重なっても年間の家計収支を赤字に転落させないため、教育資金以外に少なくとも年間60万円程度は貯蓄する必要がある。

3つ目は「60歳までに完済できること」だ。返済期間を極端に短くすると毎月の返済額が多くなりすぎるので、返済期間は家計に無理のない範囲が無難。別途、先々の分を前倒しして返済する繰り上げ返済を計画的に行うなどして60歳までの完済、または残高数百万円を目指すのがお勧めだ。

実際の見直し方だが、金利が高い「時代遅れローン」には、借り換えという対処法がある。借り換えとは、新たに住宅ローンを組んで返済中のローンを完済すること。低金利のローンに借り換えれば利息負担が減り、その分返済額が抑えられる。旧住宅金融公庫ローンなど、金利が現状3%以上か、将来3%以上になるなら、借り換えで総返済額を減らせる可能性が高い。

借り換え先になるのは銀行など民間金融機関で、10年固定の適用金利が低いところを選ぶのが得策だ。10年固定は全国どこの金融機関でも扱っているため競争が激しく、金利が割安な状態にある。短期間の金利しか約束されていない変動金利型や短期固定に比べて、割安な金利が10年続く点でも、お得感が強い。

なお、借り換えの際には登記関係費用などの諸費用がかかる。3000万円を残り30年で借り換える場合の諸費用は80万円前後である(元のローンの保証料が戻ってくることもある)が、もっとも、負担が大きいローン保証料が不要なソニー銀行などを選べば25万円程度で済む。みずほ銀行のウェブサイトなどでは借り換えの効果や諸費用が試算できる。金融機関に借り換えの相談に行く際には、複数のパターンで試算を依頼するといい。元のローンの残りの返済期間と同じ年数で新たにローンを組めるが、無理のない範囲で短くすれば、より利息負担が減らせるほか、「60歳完済」に近づけられる。金利が下がっても現状と同じ額を返済する場合、返済額を多くする場合など、複数のパターンを考えよう。