東風日産乗用車公司 副総経理 任 勇(Ren Yong)
1963年生まれ。華中科学技術大学大学院修了。81年に第二汽車(現東風汽車) 入社。2003年の東風日産設立以降、中国人トップの副総経理として、急成長に貢献。経理畑出身で、会話にはいつも数字が飛び出す。


 

中国の景気が鈍化し、新車販売にも急ブレーキがかかっている。だが、東風日産乗用車公司の任勇副総経理は「沿岸の富裕層ではなく、徐々に所得が増えてきた内陸部では、初めて車を購入したいという人が多く、年間200万から300万台は見込める」と、力説する。4月からは、中国専用の新ブランド「ヴェヌーシア(中国名・啓辰)」を立ち上げる。低価格ながら大きめで立派に見える外観は、見栄っ張りな中国人の潜在顧客にも「満足して乗ってもらえる」“自信作”という。

日産が国営の東風汽車集団と合弁会社・東風日産乗用車公司(東風日産)を立ち上げたのは2003年。日系メーカーの中ではトヨタやホンダに遅れたが、中国での販売台数はすでに両社を追い抜き、「ライバルは米GMや独VWだ」と鼻息は荒い。

昨年、日産の世界販売は、東日本大震災やタイの洪水、それに歴史的な超円高などと、厳しい環境下にもかかわらず、前年比14%増の466万台と過去最高を更新。元気の源は日産最大のマーケットに浮上した中国で同20%増を超える販売を確保したことが大きい。東風日産の設立以来、その中心的な役割を果たしてきたのが中国側トップの任氏である。

社内では「任総(レンゾン)」という愛称で尊敬と親しみを込めて呼ばれている。「現地化の徹底」や「日本人も中国人もない1つのチームへの融合」などをモットーに、トップダウンが一般的な中国企業にあって、老若男女、役職を問わずオープンに意見を聞き、スピーディーに経営判断を下す。「失敗を恐れずに挑戦する」文化を築いた功績にも評価が高い。中国など世界の主要国でカルロス・ゴーン社長の“影武者”的な有能な人物が活躍しているのも日産の強みだ。

(撮影=福田俊之)