営業マンに求められる資質は、一昔前と大きく様変わりしました。顧客を口説き落として実売につなげる「販売のプロ」がもてはやされたのは過去の話。今は高いコンサルティング力を武器に、顧客のケアをしっかりと行う「顧客満足のプロ」が実績を上げています。

以前の営業は顧客の要望を聞いて、それに沿ったモノなりサービスなりを調達すれば、とりあえずの合格点をもらえました。しかし今は顧客と一緒にニーズを考えられる人、ディスカッションしながら答えを探せる人でなくては務まらない仕事になりつつあります。それだけ世の中のニーズが不透明になっているからなのでしょうが、リーマンショック以降、この傾向がますます加速しているように思います。

法人営業ならば、顧客企業が何を欲しているかを把握するのはもちろん、顧客の顧客、つまりエンドユーザーが何を求めているのかを理解して、顧客企業と共に売り方を考えていけるような営業マンが歓迎されます。

以前なら行動力と情熱でカバーできた部分も、ロジカルで実効性の高い提案なくして、顧客の納得は得られません。単にモノを売り買いするだけの営業ならネットで構わないという意識が経営側・顧客側双方に浸透し、あえて「人」を配置する営業の仕事は、難易度が格段に高くなっているのです。

半面、営業部門に配属される人材のほうは、攻めより守りに入る「草食系営業マン」が増えているように思えてなりません。仕事の内容が急激に高度化する中で、ミスを恐れて冒険を避けるのは無理からぬことですが、そのままでは営業の仕事の喜びもなかなか実感できないでしょう。

営業とは本来「仕掛ける」仕事です。狩猟のように自分から仕掛け、手にした収獲を持ち帰る。そのプロセスに面白さも楽しみもあるはずなのに、そこが忘れられているのは残念というしかありません。営業の仕事は知的ワークと仕掛けの工夫で成り立っている、そんな自覚を持った肉食系の営業マンがもっと増えてもいいのではないでしょうか。

一方でマクロな変化に目を向けると、あらゆるビジネスの場面において中国の急成長が目立ちます。中国国内はもとより、国外へと出て行く中国のビジネスマンも、素早い動きで市場を拡大するのに一役買っています。もちろん私たちもこの動きに無関係ではいられません。競争相手になることもあるだろうし、手を組むこともあるでしょう。日米中の3拠点で一斉にサービスを開始するといった業務展開も、今後は珍しくなくなるに違いありません。

その中で日本企業が存在感を主張していくためには、異国間でも通用する思考のフレームと、彼らに後れをとることなく商談を進めていくスピードとガッツが必要です。英語が話せる・話せないはさておき、3C(Customer・Competitor・Company)、4P(Product・Price・Place・Promotion)のような営業・マーケティングの共通言語を使いこなし、肉食的に仕掛けていく気概が、活路を切り開いていくのではないでしょうか。

(構成=石田純子 撮影=宇佐見利明)