次に、アメリカの格差問題です。

ウォーレン・バフェット●投資家。バークシャー・ハサウェイ社会長兼CEO1930年、米国ネブラスカ州オマハ生まれ。慈善事業を率先し、質素な生活を送ることから敬愛の念を込めて「オマハの賢人」と呼ばれている。純資産470億ドルは、ビル・ゲイツに次いで世界第2位。

アメリカ経済の見通しについてはとても明るい見解を持っていますし、とりわけ鉄道や電気などの公共事業に関わることに魅力を感じているのは事実です。一人あたりの生産効率も高い。

しかし、アメリカの所得格差は、明確に誤った方向へ突き進んでいます。富裕層は、この25年間で資産を9倍に増やしましたが、市井の人々はそんなことはありませんでした。アメリカにも、絶対数でも割合でもたくさんのミドルクラスが存在しています。しかし、彼らの所得は増えていません。1年間の所得が1万1000ドルを切ってしまう人たちが、6000万人超います。こんな社会が健全といえるでしょうか。

いまのアメリカは、所得や資産の格差が耐えられないところまで広がってしまっています。信じられないかもしれませんが、私の所得税の税率は、私の秘書より低いのです。富裕層はそれぐらい優遇されているのです。最低限の機会の平等は絶対に必要です。資本主義社会においては、それになじめない人たちに対して、豊かな人々がしっかり支えてあげられる社会にしなければならないはずです。

世論調査を見ても、自分たちの支払った税金が十分に還元されていないと考える人が大半です。これからの大統領選挙のなかで、富裕層や所得格差のあり方が問われていくのではないでしょうか。

最後に、日本企業、とりわけこれから事業を立ち上げようとする日本人への注文です。それは、もっと顧客に焦点を当ててほしいということです。喜んでいる顧客がいるような事業が失敗していることはありません。あなたを愛する顧客と、あなたに満足する顧客がいれば、その事業はとてもうまくいっているといえます。そのために、自分の仕事への愛情が大切になるのではありませんか。

私は、1日中、いつもワクワクしているんです。なぜなら、自分が本当に愛してやまない人たちと一緒に、自分が本当に愛する仕事をしているのですから。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(佐藤ゆみ=インタビュー 山元雅信=取材協力 小倉和徳=撮影)