水準が同じなら「資料が薄いほうを」

売れない営業担当者はプレゼンテーションを「説明」と考えている。そのため、プレゼン資料も単なる情報の説明を目的に作成してしまう。

プレゼンテーション資料はこのように構成する

プレゼンテーション資料はこのように構成する

こういう人の作成したプレゼン資料を見てみると、「会社説明」「商品説明」「技術説明」と、現状を伝える文章ばかりが並んでいるのが特徴だ。その結果、プレゼンは単に資料を読み上げるだけの単調でつまらないものになる。

これでは最初は我慢して聞いていた顧客も、次第に話を聞くのをやめてしまう。一方的な説明は、「退屈でおもしろくなかった」「何が言いたいのか結局わからなかった」という不満を生み出すだけだ。

その挙げ句、プレゼンの最後に「以上の内容は資料を一通り読めば全部わかります」と言われようものなら、顧客は「時間のムダだった」と怒りすら感じることだろう。

一方、トップセールスはプレゼンを「対話」の機会と捉えている。一方的に話すのではなく、顧客の感想や意見を聞きながらコミュニケーションを行う場と考えているのだ。

プレゼン資料も、売れない営業担当者のそれとは異なり、文章ではなく個条書きになっている。しかも、図表や写真を駆使してビジュアル面でのインパクトを与えているのが特徴だ。

構成を見ると、冒頭で問題提起がなされ、自社が提供できる顧客価値(顧客に与えるメリット)が提示されている。商品の説明ではなく、商品を使用した際のメリットが具体的に書かれているのだ。

トップセールスと売れない営業担当者では、話し方も明確に異なっている。

人間は読む速度のほうが話す速度より速くなる。そのため、営業担当者の話に先行して顧客が資料を読み進め、自己流で理解してしまう事態が起こりがちだ。トップセールスのプレゼンにはこの問題を防止しつつ、顧客の興味を引き付ける工夫が見られる。

「ここまでで何かご質問はありますか?」

「この提案は御社にもメリットがありそうですか?」

「貴社の現状に合わないとお感じになる点はありますか?」

このような質問を随所に挟み込み、聞き手をプレゼンに巻き込んで、ともに考えながら進行する雰囲気をつくり出す。

もし首を傾げたり、ため息をついたり、天井を見上げながら考えている聞き手がいれば、その人はプレゼン内容に納得していない可能性がある。喉に何かつかえていたら、新しい食べ物を食べることはできない。同様に疑念を持ったまま聞くプレゼンは、頭に入らないのだ。

プレゼンの目的は相手を動かすことである。当然、相手の反応を見ながら言葉を選び対話していくスタイルでなければならない。相手を観察し、感情移入を働かせることによってはじめて、相手の心に刺さる提案を行うことができるのだ。この認識に立てば、プレゼン資料は「対話の道具」であると位置づけられる。

長時間かけて分厚い資料をつくっても、説明文だらけの「一通り読めば全部わかるもの」では、自己満足以外何の意味もない。

ある経営者は提案内容の水準が同等でほとんど差がない場合、「プレゼン資料が薄い企業を選ぶ」と語っている。的確にまとめられた資料はその企業の仕事の質を表し、作業効率と対応スピードに格段の差がある――経験則からそう考えているためだ。