2011年11月中旬に来日したマランティス次席代表は、16~18日にかけて滞在した東京で、政府官僚や与党幹部と個別に密会している。民主党関係者の証言によれば、同氏が接触したのは外務省で経済を担当する西宮伸一外務審議官や経産省の北神圭朗政務官、そして、民主党の前原誠司政調会長らだ。周知のように前原政調会長は民主党のTPP推進派リーダーである。

民主党のTPP慎重派議員グループが18日に開いた勉強会では、外務省が「日米首脳会談から一週間近く経っているが米側からは何も言ってきていない。何も進んでいない」と説明した。だが、日米間の「事前協議」はすでに始まっていたということだ。米国の貿易情報メディア「INSIDE US TRADE」も、同次席代表の動きについて次のような情報内容を配信している。

「渡日したマランティスUSTR次席代表は東京で日本の高官と会った。同次席代表は、米国側の要望やUSTRが次にとるステップを説明して、特に米国産牛肉の輸入制限緩和、日本の自動車市場の開放、日本郵政の改革を求めた」(11年11月22日付)

マランティス次席代表が来日する直前の同11月15日、国内自動車メーカーの団体である日本自動車工業会(JAMA)の志賀俊之会長は、記者会見で次のような疑問を投げかけている。以前から米国が言挙げしていた「日本自動車市場の閉鎖性」に対しての発言だ。

「日本の自動車市場が閉鎖的と指摘されている点については、78年から自動車の輸入関税はゼロであること、輸入車に特別に関わる規制、租税または認可手続き等は具体的には存在していないことから、具体的にどの点を指摘しているのか伺いたい」

事実、日・米・中・EUの自動車関税率を見ると(表参照)、乗用車・トラック・バス・部品等のいずれも日本の関税率は「ゼロ」である。一方、日本市場の閉鎖性を詰(なじ)る米国では、乗用車が2.5%、バスは2%、トラックには実に25%の関税がかけられている。関税に限っていえば、市場を非自由化しているのは米国のほうだ。同工業会は「いったい何が問題なのか、いまだにわからない」と首を傾げる。

実は、前掲の漏出した経産省内部メモにそのヒントがある。「米国自動車政策協議会(AAPC)の主張」として列挙された「重要なファクト」の中に、こんな記述があるのだ。

「日本は、ユニークな技術要求や流通及びサービスセンターなどの制限、通貨介入などの非関税障壁で自動車の輸入をブロック」

ここに書かれている「ユニークな技術要求」とは何か。