JALの経営が揺れに揺れていますが、いまから考えると、2009年9月初め、日本経済新聞の1面に出た「日航が出資要請へ 子会社株 旅行大手や商社に」という見出しのついた記事がひとつの分岐点だったように思います。

私は「JALが子会社ジャルウェイズの株式売却を検討している」というその記事を見た瞬間、ある2つの言葉が頭に閃きました。ひとつはダイエー、もうひとつは「クラウン・ジュエル」です。

クラウン・ジュエルとは直訳すると「王冠を飾る宝石」であり、転じて「誰もが欲しがる価値の高いもの」という意味です。M&Aにおいては、買収する会社において、資産価値があり、収益力にも恵まれた最も魅力的な部門をさした言葉です。

ダイエーはご存じのように、業績の悪化を食い止めることができず、2004年10月、産業再生機構入りとなりましたが、1999年にはアメリカ進出の足がかりとして買収したハワイの大型商業施設、アラモワナショッピングセンターを地元の大手デベロッパーに、2001年にはコンビニエンスストア、ローソンの株式をUBSウォーバーグ証券に、そして2002年には、パリの伝統ある百貨店の日本における唯一の公式な提携店、プランタン銀座を読売新聞社に、それぞれ売却しています。

いずれも膨れ上がる有利子負債に耐えかねての事業売却でしたが、アラモワナやローソン、プランタンこそ、ダイエーにとってのクラウン・ジュエルでした。こういう魅力的な部門を投げ売りし始めたということですから、相当危険なところまで経営が悪化していたのです。

ジャルウェイズというのはリゾート路線をまとめた国際線の運行会社です。ハワイ路線など、ドル箱をいくつも抱えている会社の株式を売りに出そうというわけです。JALもいよいよクラウン・ジュエルを売り始めたな、と思いました。でも、そのことで切り離された本体側の企業価値も下がるわけですから、よほど高値で売らないと、結局、資金繰りがうまくいかず、産業再生機構入りとなったダイエーと同じ轍を踏むことになりました。

JALとダイエーでは、業種も市場もまったく異なりますが、倒産する会社がたどる経路には共通点があります。後に説明するように、財務諸表でその会社の状況を見ると、経営状態の悪くなっている会社は大体同じところに問題が出ています。

JALがダイエーと違うのは、自分たちはナショナルフラッグだから、最悪でも国が潰しはしないだろうと高を括っているところがある点です。企業体質として親方日の丸がいまだに抜けていません。確かに現民主党政権も「JAL、ANA(全日空)2社体制維持」の方針を言明していますが、潰さないにしても分割はありえるでしょう。以前のJALは国際線会社と国内線会社に分かれていましたから、もとに戻せばよいのです。それ以前はJALとJAS(日本エアシステム)というまったく別の会社です。そうすれば再建の選択肢も広がります。

その後、JALへの融資をしている金融機関は、「新旧分離」を含む政府介入を要求しています。これは経営再建手法のひとつで、健全資産や事業を保有するグッドカンパニーと不良資産を持つバッドカンパニーに会社を分離し、前者には銀行などが融資を行い事業を継続させ、後者に政府がテコ入れするなど何らかの支援策を行うというものです。グッドカンパニーから出る収益で、バッドカンパニーの不良債権や負債を返済していくというやり方もあります。バッドカンパニーを破綻させるということもありえます。それにより、負債を帳消しにしてしまうのです。

今回のJALに関しては、その方法は新旧分離も含めて決まっていません。

いずれにしても、私たちが注意しなければならないのは、もし、国が資金援助をするというのであれば、GMがそうであったように、いったん破綻処理をしてから、われわれ国民のお金を入れるべきだということです。

お金を貸した銀行、株主、経営陣がそれぞれの責任をとり、その後、公的資金を投入すべきです。経営責任などをあいまいにしたままの公的資金投入を許してはならないでしょう。