「シックスポケット」を狙うセグメンテーション

少子高齢化が進むと多くの市場は縮小を余儀なくされます。どんな対策が功を奏するでしょうか。

「サブカテゴリーの創造」がひとつの解法でしょう。子供写真館チェーンの最大手「スタジオアリス」がそれを実現した企業の例です。

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サブカテゴリー化

もともと写真の現像などを取り扱うDPEチェーンを展開していた同社は、1992年、初の「こども専門写真館」をオープンします。従来の写真館といえば、腕利きの主人の指示によってポーズや立ち位置を決められ、被写体は少し緊張しながら重厚なカメラに撮られるというものでした。セグメンテーションを子供に絞った同社は、被写体が楽しめるユニークなシステムを考案します。

まず、豊富な撮影用衣装に無料で着替えられるようにしました。七五三などの記念日に訪れても、同社に用意された衣装に着替えて撮影してもらえるので、手ぶらでいい。撮影するのは女性スタッフが中心。何度も着替えることができるので、この服がいい、こんなポーズがいい、と家族で賑やかに撮影を楽しむことができます。

撮影料金は何枚撮っても定額。気に入ったカットのみをプリントしてもらい、別途印刷費用を支払うという仕組みです。結果的には結構な枚数を購入する客が多くなる。子供(孫)と一緒に写った両親、両祖父母の「シックスポケット(6つの財布)」を狙った巧みな戦略といえるでしょう。

同社は、記念日にプロに写真を撮ってもらうことが中心だった「写真館」に、「子供が着せ替えを楽しめる」というサブカテゴリーを付加しました。このことにより、「こども専門写真館」というもう一つの市場が立ち上がったのです。