世界で注目される「水と健康」の最新研究

北川良親秋田県立大学名誉教授 農学博士。1966年、鹿児島大学農学部卒業。71年、北海道大学大学院農学研究科修了。秋田大学医学部助手・講師、秋田県立大学生物資源科学部教授、同大学附属生物工学研究所教授などを歴任。日本植物生理学会などに所属。北川科学総合研究所の代表も務める。http://kitagawa-inst.com

「アクアポリン」と言っても、一般にはなじみのない人が多いだろう。直訳すれば「水(aqua)の孔(あな)(porin)」。私たち人間をはじめ、動植物、細菌の細胞膜などに存在し、水分子の通路の役割を果たしているタンパク質のことだ。

人体の60~70%は水分というから、細胞の内と外との水のやりとりは生命にとって最重要な機能の一つに違いない。しかし、そのメカニズムにはまだ謎も多いという。アクアポリンが見つかったのも比較的最近で1992年のこと。発見者のピーター・アグリ博士は2003年にノーベル化学賞を受賞している。

この「水と健康」をつなぐアクアポリンについて、新たな論文が米国の国際学術誌「BBRC」に掲載され注目されている。執筆者の一人は、日本においてアクアポリン研究の第一線で活躍する秋田県立大学名誉教授の北川良親博士だ。

「私たちが研究したことの一つは、水の種類によってアクアポリンの透過性、つまり細胞内への通りやすさに違いがあるかということです。細胞というのは、外から多様な物質を取り込んで化学反応を起こし、エネルギーを生み出し、物質を合成し、さらに排出しています。この物質代謝があることが、生きている証しなのです。特に水は細胞にとって本質的な成分ですから、その“通りがいい”ということは細胞の代謝の活性化、細胞の元気にもつながると考えられるでしょう」

研究の結果はどうだったのか――。北川博士らは水の物理的・化学的性質の違いが、アクアポリンの水透過性に影響を与えるというデータを得た。

「具体的には、水道水と市販されている3種のミネラルウオーターについて、ヒトアクアポリンを発現させたカエルの卵母細胞を用いて水透過性を測定しました。すると、日田天領水というミネラルウオーターが他の水と比べて高い数値を示す結果となりました。これは特定の水がアクアポリンに対して特別な機能を有していることを示唆しています」